Worksカモガワ,小説

 花の群生地だった。佐渡某所、遠くからたぁ、たぁ、と鳥の鳴き声が聴こえる。奥には巨大な曲がり松が浩々と聳え、突き抜ける空を一身に抱きとめている。手ごろな岩があり、男はしばし休憩と腰を落ち着けた。道に迷った。なぜか地図アプリが起動しない ...

Works小説,星々

 湯から引き上げたそれはてらてらと黒光りして、艶のある羽根は簡単に手で抜くことができる。その物体に命はない。しかし、それを形づくるすべての構成物に魂が宿っている。天野莉々は一度その物体の前で手を合わせたのち、カラスの死骸から一本一本そ ...

Works小説,星々

 黒い大地が一本の線を成して空の遠さを繋ぎ止めている。見渡す限り人の影はなく、私たちは途方に暮れる。いや、天を仰いでいるのは私だけか。現地で雇ったドライバーは、年代物のウォークマンから流れる陽気な音楽に身を浸し、遠くを見つめながら小刻 ...

Works圏外通信,小説

わたしたちは、おんなじところをぐるぐるぐるぐる。
なんどもなんどもぐるぐるぐるぐる。
でもそれだけじゃないんです。
それだけじゃあ、ないんです。

彗星A よっす
彗星B 

Works小説,鳩のおとむらい

 現代だとなかなかお目にかかる機会はないだろうけど死霊術師なんてのはどこにでも当たり前にいるもので、とはいえ終戦後に人間で僵尸を作成するのは表向きには禁じられたものだから、いま私たちが何を操っているかというと、たいてい鳩であることが多 ...

WorksCALLmagazine,小説

「oh, aa, hidoi……hayaku kurumahe」
 大きいものの気配があった。それまで森は静まり返っていて、ハウス、そう、大きいものからハウスと呼ばれていたもの、わたし、intoハウス、していて、頭をゆっくりと ...

Works小説

 銀皿には色とりどりの花々に若菜、青いお米にたくさんの木の実が並んでいて、西大寺は思わずじっと見入った。青く炊かれたお米は「3」という形に盛られていて、その周りに花々が散らされ、木の実や野菜が放射線状にこんもりと飾られている。西大寺の ...

Diary小説

表題の通りです。

いま藤井は上記の講座を受講しているのですが、第4回(11/20)にて告げられた最終課題が「MAX10000字で自由に物語をつくってください」でした。締切は12/12。おいおい一ヶ月もないやんけ! と及び腰 ...

Works,公募小説,幻想と怪奇SSコン

「お客さまお見えになりました」
 わたしが案内すると先生は「はい、準備万端です」と返事した。雨上がりの中華街はまだ煙っていて、隣の店からはふわりとお香の匂いが漂ってくる。ごみごみとした路地の突き当たり、この占い処に在籍するのは ...

Works小説

 志紀がわたしを呼びだすときは大抵ろくでもない用事だが、今回はちょっと度を超していた。
「できちゃったんだよね、宇宙……」
 わたしは水槽の前で呆然とする。水槽の底には「兄さんが置いてった」というアミメニシキヘビがとぐ ...