Works,

目をつぶり、握っている
握っていると安心する
こころはまもられて
面に膜が張って、そのうえに置かれている
遠くに炭が燃えていて
じっじっ、と空気をふるわせている
目を閉じると、蚕にもなれ ...

Works,

てんちゅうさつ、てんちゅうさつ、てんちゅうさつ、
ぎゃくてんちゅうさつ、しょうてんちゅうさつ、
ちゅうさつけい、ちょっけい、うこっけい、
しんさつ、かたこんべ、かたくり、
あげは、かるま、たまりんど、 ...

Works,

流れた、萌ゆ
泥、ジプシー、空転斬り
餃子八朔百合の芽

緑沼のダンス、干す虫を出す
ために遅延する鏡
エシャロットをシルクで磨く
なます、紅白以外
寒天昇天害黎明期 ...

Works,公募小説,幻想と怪奇SSコン

「お客さまお見えになりました」
 わたしが案内すると先生は「はい、準備万端です」と返事した。雨上がりの中華街はまだ煙っていて、隣の店からはふわりとお香の匂いが漂ってくる。ごみごみとした路地の突き当たり、この占い処に在籍するのは ...

Works小説

 志紀がわたしを呼びだすときは大抵ろくでもない用事だが、今回はちょっと度を超していた。
「できちゃったんだよね、宇宙……」
 わたしは水槽の前で呆然とする。水槽の底には「兄さんが置いてった」というアミメニシキヘビがとぐ ...

Works小説

 極まってきてどうにもならなくなったので何か楽しいことはないものか、いやしかしそれをするだけの体力と気力はないといった状態で、ただなにをするでもなく虚空を見つめていた。そこに見かねた同居人が「銭湯行こ」と声をかけてきた。私はうーんと間 ...

Works,

さらわれる
心身が、千々の紙からできていることを知る
剥がされて 揉まれる
空気がはげしい
狙われている
天は愛想笑いしている
地は隙あらば吸いつく
春に生まれないでいてよかった ...

Works小説

「鳩が造れることを発見したわ」
 宮野誉ほまれがそう言ったのはある冬の放課後だった。小倉闇子あんこはいつものように「ふうん」と心ここにあらずな返事をした。二人は学園のベンチに座っていた。今日は図書室が書架整理のため閉室していた ...

Works,

夜の色として…?
たなびく 電波塔
蠢くのが塊で、地上
見下ろしたりしなかったりしろ
鳥の字を三つ集めてniǎo
弛緩することはない
糞尿の二点ダーシ ぺりっと
廃棄されるまある ...

Works,公募公募,坊っちゃん文学賞,小説

 祖母はよく物を失くす人だった。ちょっとしたもの、飴だとか消しゴムだとか、そういったものならいいのだけど、実印を失くしたこともあってそのときは大騒ぎだった。ちょうど遊びに来ていた母と私が捜索に乗り出し、しかし祖母ひとりだけのほほんとし ...