一枚の声
銀皿には色とりどりの花々に若菜、青いお米にたくさんの木の実が並んでいて、西大寺は思わずじっと見入った。青く炊かれたお米は「3」という形に盛られていて、その周りに花々が散らされ、木の実や野菜が放射線状にこんもりと飾られている。西大寺の ...
影の書
托卵全ツッパでこの世とおさらば銀メッキの卵型飛行物体からインジェクションして抜け目なくイントロダクション、どうやら熱帯雨林の甘露からはみ出した影絵に目減りする初期衝動喚起せよ熟・リビドーリロードするビロード状のコルセットから放出プリテ ...
朝をとじこめる
目をつぶり、握っている
握っていると安心する
こころはまもられて
面に膜が張って、そのうえに置かれている
遠くに炭が燃えていて
じっじっ、と空気をふるわせている
目を閉じると、蚕にもなれ ...
花揺れる
てんちゅうさつ、てんちゅうさつ、てんちゅうさつ、
ぎゃくてんちゅうさつ、しょうてんちゅうさつ、
ちゅうさつけい、ちょっけい、うこっけい、
しんさつ、かたこんべ、かたくり、
あげは、かるま、たまりんど、 ...
やるっきゃないない
流れた、萌ゆ
泥、ジプシー、空転斬り
餃子八朔百合の芽
鱈
緑沼のダンス、干す虫を出す
ために遅延する鏡
エシャロットをシルクで磨く
なます、紅白以外
寒天昇天害黎明期 ...
鳥を握る
「お客さまお見えになりました」
わたしが案内すると先生は「はい、準備万端です」と返事した。雨上がりの中華街はまだ煙っていて、隣の店からはふわりとお香の匂いが漂ってくる。ごみごみとした路地の突き当たり、この占い処に在籍するのは ...
亀の背中
志紀がわたしを呼びだすときは大抵ろくでもない用事だが、今回はちょっと度を超していた。
「できちゃったんだよね、宇宙……」
わたしは水槽の前で呆然とする。水槽の底には「兄さんが置いてった」というアミメニシキヘビがとぐ ...
鬱の湯
極まってきてどうにもならなくなったので何か楽しいことはないものか、いやしかしそれをするだけの体力と気力はないといった状態で、ただなにをするでもなく虚空を見つめていた。そこに見かねた同居人が「銭湯行こ」と声をかけてきた。私はうーんと間 ...
鳩造りの工程
「鳩が造れることを発見したわ」
宮野誉ほまれがそう言ったのはある冬の放課後だった。小倉闇子あんこはいつものように「ふうん」と心ここにあらずな返事をした。二人は学園のベンチに座っていた。今日は図書室が書架整理のため閉室していた ...