鳥を握る
「お客さまお見えになりました」
わたしが案内すると先生は「はい、準備万端です」と返事した。雨上がりの中華街はまだ煙っていて、隣の店からはふわりとお香の匂いが漂ってくる。ごみごみとした路地の突き当たり、この占い処に在籍するのは ...
亀の背中
志紀がわたしを呼びだすときは大抵ろくでもない用事だが、今回はちょっと度を超していた。
「できちゃったんだよね、宇宙……」
わたしは水槽の前で呆然とする。水槽の底には「兄さんが置いてった」というアミメニシキヘビがとぐ ...
鬱の湯
極まってきてどうにもならなくなったので何か楽しいことはないものか、いやしかしそれをするだけの体力と気力はないといった状態で、ただなにをするでもなく虚空を見つめていた。そこに見かねた同居人が「銭湯行こ」と声をかけてきた。私はうーんと間 ...
鳩造りの工程
「鳩が造れることを発見したわ」
宮野誉ほまれがそう言ったのはある冬の放課後だった。小倉闇子あんこはいつものように「ふうん」と心ここにあらずな返事をした。二人は学園のベンチに座っていた。今日は図書室が書架整理のため閉室していた ...
heronverse
夜の色として…?
たなびく 電波塔
蠢くのが塊で、地上
見下ろしたりしなかったりしろ
鳥の字を三つ集めてniǎo
弛緩することはない
糞尿の二点ダーシ ぺりっと
廃棄されるまある ...
ウロツツキ
祖母はよく物を失くす人だった。ちょっとしたもの、飴だとか消しゴムだとか、そういったものならいいのだけど、実印を失くしたこともあってそのときは大騒ぎだった。ちょうど遊びに来ていた母と私が捜索に乗り出し、しかし祖母ひとりだけのほほんとし ...
なぜ四葉のクローバーは拾われなかったか——胎界主第一部「使い魔」
まずは第一部の第一話から見ていこう。胎界主の第一話は難解なことで知られていて、なかには第一話の解説記事なども存在する。私は初め、胎界主@wikiのエピソード考察を別ウィンドウで開きながら読んだ。
0001、001は、初読者 ...
これから胎界主の話をしよう
……どこから話せばよいのだろう。まずは、私が胎界主と出会ったときの話から。私が胎界主を読み始めたのは、どうやら2020年3月27日のことらしい。なぜ分かるかというと、LINEで「胎界主」と検索すると、友人に「一昨日読み始めた胎界主と ...
白鷺憑姫
あなたは最近同じ夢ばかり見ています。舞台はこの屋敷のようです。白無垢の花嫁の姿は悍ましいほど美しく、血の気の引いた白い貌かんばせはまるで人形のよう。雪の小径に川が流れるように、純白の着物に緑青色の帯が映え、なんとも艶やかに見えました ...