鳩アンソロジー制作覚書

Diary文学フリマ,

2023年11月11日に行われた文学フリマ東京37に合わせて、鳩をテーマとしたアンソロジーを制作した。本記事は、アンソロジーを制作するにあたってのメモである。これからアンソロジーを企画しようとしている方には何かしら参考になるかもしれない。

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①募集前(2023.9.20)

ちょうど、SNSでFF内の紅坂紫さんが「INITIATION」をテーマとした掌編を募集しているのを見かけ、こういうやり方があるのか、と思った。紅坂さんの場合は、原稿を募り、簡単な校正をしたうえでPDF冊子の電子書籍にて公開するという形式で、募集動機は「ハロウィーンだしホラーが読みたくなったから」だと仰っていたような気がする(違ったら取り下げます)。もちろん私もこの企画に応募したのだが、この企画を見たのがきっかけで、自分でも「アンソロジーってやっていいんじゃないか、もっと気軽に企画していいんじゃないか」と思えた。

鳩のアンソロジーを作ろうと思い立ったのは9月20日で、その時点でかなりパツパツのスケジュールになりそうだなと思ったので簡単に概算してみた。今日から募集を始め、10月中旬までに原稿を揃えて、10月末に入稿、そしたら間に合うな……と、ガバガバだがそのような皮算用をして、お金のことはあまり考えなかった。なんとかなるだろうと思ったし、なんとかできる範囲でしかやらなくていいだろう、と思った。

あまり日がなかったので、思いついたその日に募集要項を作り上げる必要があった。上に鳩アンソロジーの募集要項記事を貼ったが、紅坂さんの制作した募集要項を大いに参考させていただいた。また今回は、文章だけではなくイラスト、漫画も募集したいと思った。これもなんとなくの思いつきではある。そもそも「鳩アンソロジー」を編もうと思ったのは、主宰している文芸同人サークル・造鳩會が解散するからで、造鳩會にて制作していた文芸誌『異界觀相』の在庫が心もとないというのが主な理由だった。つまり、文フリ当日に、自分のブースで売れるものが無くなるのを避けたかったのである。そして、せっかく解散するんだから派手に花火でもあげましょうや、という気持ちもあった。もちろん、「鳩をテーマにしたアンソロジー」というもの自体の魅力も大きくて、思いついた瞬間にすぐ実物を見てみたくなった。だから電子ではなく物理本を選んだし、異界觀相には今まで漫画を掲載したこともあったから、あわよくばイラストや漫画も再び掲載できないだろうかという下心もあって、「小説、エッセイ、詩歌、イラスト、漫画等」をジャンル問わず募集する闇鍋のような同人誌にすることにした。

イラストについては、募集要項を公開してから複数の方から質問をいただいてありがたかった。初めてのことでイラストや漫画を入稿する際のことが全くわからず、応募要項を何度か修正、更新した。主に以下の点を見落としていた。
・サイズ、断ち落としについての表記(3mmとした)
・カラー、モノクロでの解像度(カラー350dpi、モノクロ600dpiとした)
・CMYKであることの表記
また、使用予定の印刷所はイラストに特化した印刷所ではなく、テンプレート等の配布も行っていない。そして、印刷予定の紙を既に決めていた(淡クリームキンマリ90kg)ので、その紙質的にきれいな発色とはならないかもしれない。以上二点はあとから「記載したほうがいいかも」と思ったので自発的に、募集要項記事に追記した。

Twitter(現X)、Fedibirdにて告知ツイートを投稿したところ、けっこう伸びて、全く知らない界隈までリーチしたようだった。

最後に、このアンソロジーについてこの時点で決まっていたことをまとめておく。
・10月10日23:59締切、10月17日ゲラチェック・送付先フォーム回答締切、10月末入稿
・判型:A5、ページ数:応募が来た数による、部数:印刷費の兼ね合いで後から決める、おそらく無線綴じ冊子になる
・表紙:マットコート220kg、本文:淡クリームキンマリ90kg
・選考は行わない(私にそんな権威はないため)、来たものはとりあえず掲載(ただし、差別表現があったり、18禁だったりした場合は掲載しない旨を応募要項に記載済)
・巻頭に目次を掲載、巻末に作者自己紹介一覧を掲載
・表紙、本文ともに自分でデザインする(Illustrator、InDesignを使用)
・印刷所は有限会社国宗さまに依頼
・作品をメールアドレスにて応募してもらい、藤井が簡単な校正を行う→ゲラチェックを経て校了

以上が、企画発案から応募要項の公開までのメモである。

 

②募集期間〜締切(2023.9.20〜10.10)

募集を開始してその日に早速二件届いた。一件は、既作だがテーマがちょうど鳩だったからとご応募いただいたもので、もう一件は書き下ろしだった。筆が速くてビビった。二日目に一つ山があって、一日に六件も届いた。このあたりから、きちんとフローをつくって作業しないと見落としが出て詰むな、と思ったので、作業工程をしっかり確立することにした。

まず、InDesignでフォーマットをつくる。以前にもA5の冊子をつくったことがあったので、それを使い回すことにした。縦書き二段組で12Q、行間9.75H、行文字数26文字、行数20行、段間10mm、天地ともに22mm、小口17mm。フォントは(有料フォントで申し訳ないが)「FOT-筑紫アンティークL明朝 Std 」を使用した。ちなみに見出しには「FOT-筑紫A見出ミン Std」を使用している。原稿が来たら流し込むだけの状態にしておいて、いつでも組版作業ができるようにした。また、応募者には献本を一冊差し上げる予定なので、Googleフォームを作成し、「文フリ現地で受け取り」か「郵送(住所を回答してもらう)」かを回答してもらうことにした。

それから、下記の工程で作業を進めることに決めた。

①メールが来たら、まず記載されたメールアドレスをメモ帳にコピペする(あとでメールを一斉送信するときにまごつかないようにするため)
②掲載順を適当に決め、とりあえず原稿をInDesignにコピペして流し込む
③読む
④該当部分のみPDF形式にて出力する。誤字があった場合、赤で印をつけたり「トル?」など文字を書き入れたりする(PCがMacなので標準搭載の「プレビュー」からマークアップ機能を使用して行った)
⑤WorkFlowyに目次ページ「タイトル(作者名)」、応募者リスト「-校正 -フォーム」を作成
⑥メール本文をコピペして、感想を交えて返信作成→送信
⑦目次と作者紹介欄に作品名や作者名、自己紹介をコピペする

⑤について、WordFlowyというアウトライナーを使用して、目次や応募者ごとの進捗を管理した(敬称略)。WorkFlowyの良いところは、テキストの順番や階層を自在に入れ替えられるところ。あとあと掲載順を入れ替えたくなったときも簡単にそれを視覚化できる(WorkFlowy上で掲載順を変更→実際にInDesignで反映として、全体の最終確認をするときもWorkFlowyの目次リストを参照しながらスムーズに行えるのではないかという目論見がある)。また、この時点で届いていた作品の傾向から、大まかに「日常系(首振りの極意)」、「神話系(ノアへの伝言)」、「奇想系(奇想本能)」という3つの分類を作成した。私のFFにSF好きや奇想好きが多いこともあって、そのような作品が多く届くだろうという予測もありこのような分類になっている。以降は、届いた作品がどれに近いかを鑑みていずれかに分類し、掲載順を決めていくことにした。
応募者ごとの進捗については、ゲラチェックメールを送信して、その返信が返ってきて「原稿OK」になった場合に「校正」にチェックを入れ下線で消す、またフォームの入力があった場合に「フォーム」にチェックを入れ下線で消す、という運用にした。ゲラチェックもフォーム記入も10月17日を締切にしているが、これで抜け漏れなくリマインドすることができる。

⑥について、下記のようなメール文を作成しておいた。

応募者 さま

はじめまして、藤井佯と申します。
この度は「鳩アンソロジー」へのご応募ありがとうございました。

〈感想〉

締切前ではございますが、一旦ゲラをお送りさせていただきます。
ページ数は仮のものになります。
〈赤を入れた箇所について記載〉
赤字を入れた点は藤井個人の主観が色濃く反映されたもの、もしくは誤字かどうか藤井のほうでは判断しきれなかった箇所になります。そのため、必ず変更しなければならないということは全くございませんのでご理解ください。ご確認いただき、本メールにて修正の有無をご連絡いただけますと幸いです。

今後のスケジュールについてお伝えいたします。
・校正(本メール)へのご返信→10月17日(火)までにお願いいたします。
・献本お受け取り方法アンケート→10月17日(火)までにお願いいたします。
・10月末→念校をお送りいたします。特に修正のない場合ご返信は不要です。
・10月末入稿
・11月11日(土)文学フリマ東京37にて頒布
・11月11日以降 通販、献本のご郵送

●献本のお受け取り方法について、下記アンケートフォームにご回答をよろしくお願いいたします。(10月17日締切)
https://forms.gle/●●●●


以上、引き続きよろしくお願いいたします。

藤井佯

 

③募集後〜入稿(2023.10.11〜10.23)

応募は、2023年9月20日20時ごろから10月10日23:59まで行われた。約20日間という短い間だが、77件ものご応募をいただいた(私の書いたものを合わせて全78作品のアンソロジーとなる→後述するが、結果として全77作品に落ち着いた)。

日ごとの応募数は下図の通りだった。やはり応募総数の3分の1が最終日に届いた。また、週末に制作された方が多かったのか、日曜日・月曜日は応募が増えた。

届いた作品のジャンルは、小説が圧倒的に多かった。ついでエッセイ、イラスト、詩歌の順となった。私のフォロワーに小説の書き手が多いこと、詩歌の界隈に応募ツイートがあまり回らなかったことが理由として考えられる。3分の1ほどがFF内からの応募、3分の2は初めての方からの応募となった。

「首振りの極意(日常系)」に分類される作品が増えてきたので、新しく「分光する首」という章を作成し、「描かれる鳩がドバトであるかそうでないか」を基準に「分光する首(日常系-ドバト)」「首振りの極意(日常系-ドバト以外)」としてさらに分類した。そのため最終的には「分光する首」25作、「首振りの極意」20作、「ノアへの伝言」15作、「奇想本能」17作という内訳になった。

私はせっかちな自覚があり、仕事が降ってくるとすぐに片付けたくなるし、ボールを長く持っていたくない性分である。それが災いしてか、募集締切の翌日10月11日には全ての原稿をInDesignのデータに反映し、全ての作者にメールでゲラの確認を出しきってしまった。さすがに過集中だったと思うが、(ミスがないのであれば)こうした作業は早いに越したことはないので良しとする。とりあえず10月11日時点で、9割がたの組版作業が終了した。その後は作者からの確認メールを待ち、修正があればそれを反映するといった作業に終始することとなった。

また、仕事がなくなると落ち着かないという悪癖から、表紙を作成してしまってからはすぐにSNSにて告知ツイートを行ってしまった。非常に中途半端な時間帯に投稿してしまい申し訳なかった。

表紙は、パブリックドメインの素材から鳩や薔薇などを持ってきてIllustratorで制作した。ページ数が確定(266ページ)したので背幅の厚みを計算することが可能になり、表紙については10月13日段階で入稿が可能な状態に落ち着いた。

また、ページ数が確定したことで印刷所の自動見積りを使用できるようになったので、見積もりを実行した。かなりの金額で慄いたが後戻りはできない。部数については、下記をふまえて検討した。

・初版のみで再版の予定がない
・献本だけで80冊弱になる
・造鳩會にて制作した異界觀相vol.1との比較(vol.1は重版して200部売れているが、鳩アンソロジーは異界觀相よりツイートが拡散されており話題性がある)
・各々にファンのついた方が多く寄稿されているのでその効果を見込む
・純粋に「鳩アンソロジー」そのものに惹かれている層を見込む
・類似のアンソロジーの販売部数を参考にする

上記を勘案して、献本(寄稿者)×3をひとつ目安とするのがいいだろうと感じ、ひとまず250部刷ることに決めた。献本で80冊消えるので販売可能部数は170部になる。そう考えるとまだ少ないという肌感があったが、これ以上は私の財布がもたない気がした。ツイートの拡散具合についての感覚は個人的なもので言語化することが難しいが、単純にRT数やいいね数を見るだけではなく、いかに知らないアカウントにまで届いているかを考えると、鳩アンソロジーは異界觀相のときよりも多めに刷ってよさそうだと感じた。また、書店でのお取り扱いについて、2〜3の書店から事前にお話をいただいたので、その分は上乗せで考えることにした。
……最終的に財布の具合がなんとかなったので280部刷ることにした。販売可能部数200部。もうなんとでもなれ、ということもあるし、在庫を抱えつつゆっくり売れていってくれるならそれもありだと思った。

早めに印刷費を回収できるに越したことはないので、10月13日の段階でBOOTHのページを開設した。文学フリマのwebカタログが10月13日に公開されたこともあって、それであればもうwebカタログにもBOOTHにも情報を出そうという判断だった。ちなみに、{(印刷費+諸経費)÷想定価格¥1500 }÷(想定部数280-献本数)を行った結果0.645との値を得た。販売可能部数200部の6割5分売ることができれば元がとれるということになるので、とりあえず130冊前後売り切りたいと思った。

10月17日に、参加者全員へ宛てて(bccで)念校データをお送りした。Google Driveにpdf形式でアップロードし、そのリンクをメールに貼付するかたちでデータをご確認いただいた。URLが漏れるリスクはあるが、一人で80本近い原稿のチェックを行うことは現実的ではないため、各々の誌面を各々ご確認いただき、本文の修正漏れやもくじ・自己紹介欄の不備などがある場合にのみ返信いただく形式をとった。

以下は、原稿募集中〜入稿前に起こった問題とその対処についてのメモである。

  1. フォームの不具合・未回答
    • 「フォームに回答した」というメールが届いたにもかかわらず、回答が記録されていないケースがあった。そのほか、締切後も複数未回答があったため、フォームへの回答を依頼するメールを個別にお送りすることで対処した。
  2. 校正への返信がない
    • 初校をお送りする際に修正の有無にかかわらず返信を依頼していたが、校正に対しての返信がないケースがあった。その場合は、後日全体に宛てて念校を出したため、その際に返信がなければ原稿自体に問題ないものとみなして進行した。
  3. 念校の時点までにいただいた修正に漏れがあった
    • 参加者からの指摘で気がつくことができた。完全にこちらのミスである。しかし、念校を参加者に直接ご確認いただくフェーズを挟むことで最悪の事態を防ぐことができた。
  4. 念校で本文の修正が大量に来た
    • 初校への修正有無についてのメールを返信いただいた時点で作者チェックは完了しているものとして進行していたが、念校の確認段階でも本文の細かい修正を大量に指摘されるケースがあった。このような事態を考えて念校の確認期間は十分な時間を確保しておくことが重要だと感じた。
  5. 念校の段階で、白かった鳩がドバトに変化したことで、作品を配置する章を変更する必要が発生した
    • これは「鳩アンソロジー」特有の事態であるが、(章分けをドバトであるかそうでないかで行っていたため)本文の修正により作中に登場する鳩の種類が変化したことで、配置する章ごと変更する必要が生じたケースがあった。念校の段階での変更であったため、問題なく変更できた。
  6. 掲載をお断りする作品があった
    • 一作品、届いた時点で違和感を覚える作品があった。本来であれば、その時点でお断りの連絡を入れるべきであったが、主催者としての未熟さゆえ、念校を出したあとになってから掲載不可の連絡を行うこととなった。掲載不可のメールでは、その理由と、ある程度作業が進行したのちのお断りになったことに対するお詫びを記述した。
    • 当該作品には、家父長制への無批判な姿勢と女性差別描写が見受けられ、また全年齢対象作品とは言い難い描写も存在した。そのためメールでは、応募要項に沿って「当該作品は『全年齢対象作品』であることを満たしておらず、かつ『特定の人物、属性への差別表現、ヘイト表現を含む作品』であるために掲載ができない」ことを説明した。応募要項は自身と本を守る砦にもなるのだと痛感した。
    • 作品が届いてから一週間後の連絡となったが、その間、当該作品から心的苦痛を受け続けた。当初は作品の冒頭に警告文をつけたうえでの掲載を検討していたが、しばらくしても作品から受けた心的苦痛が治まらなかったため、読者にも同様に心的苦痛を与える可能性を考慮して、掲載を取りやめる決定を下した。読者を傷つけることとなってしまった場合、自身も加害者の側に回ってしまうこと、主催者として当該作品を掲載した場合、当該作品に表現された思想について黙認することになること、さらに「鳩アンソロジー」は紙の本として長く残るものであるため、どのような問題も解消したうえで入稿するべきだと考えたことによる決断だった。
    • アンソロジーを編集し、作品を広く募る場合、このようなケースにより心的苦痛を受けることがあるということは、制作開始前には想定していない事態だった。
  7. 本文では見られなかった誤字が、もくじと作者紹介で発生した
    • もくじと作者紹介における筆名を、コピー&ペーストではなく手入力によって行ったことで発生した事故である。念校の確認時に作者から指摘されて事故は未然に防がれた。手入力は極力行わず、いただいた原稿からすべてコピー&ペーストするべきだった。
  8. 海外からの応募があった
    • 日本語以外で書いた原稿を機械翻訳にかけて日本語にし、そのうえで応募していただいたケースがあった。機械翻訳により一部不明瞭になってしまった点が見受けられたため、まずは物語の中身を理解するために作者にいくつかの質問をした。そのうえで校正を行い、作者とのやりとりを他原稿よりも入念に実施した。
    • もう一件、海外からの応募があった。どちらの場合でも、献本の発送先については転送サービスや知人への郵送を提案されたため、海外へ献本を発送するということにはならなかった。しかし、事前に海外からの応募があることを想定しておらず、応募要項にその場合の対応について記載していなかった点については反省した。
  9. 使用フォントでは表示できない漢字の含まれた筆名があった
    • 当該の漢字のみ別フォントに置換することで対応した。ただし、ちょうどよい太さを持ったフォントがなかったため、もくじや作者紹介などの筆名を見出し(太字)にする場面では、当該漢字の太さを文字装飾で調整して見栄えを整えた。
  10. 二作書いたのでどちらを掲載するか決めてほしいと頼まれた
    • お断りした。選考なしの募集をする以上、こちらでその価値判断に介入するべきではないと考えたため。作者の方にどちらを掲載したいか決めてもらった。(応募要項に「応募は一人一作品のみとします。複数応募があった場合、最後に応募されたもののみを収録いたします。」と掲載していたので、それを理由にした。)

10月23日、ついに入稿した。

その後、献本受け取り方法のアンケートから、回答いただいた住所をクリックポストの提供するcsvテンプレートに移し替える作業をした。この際、アンケートにて「郵便番号」と「住所」の項目を分けていなかったことで作業が煩雑になったので、住所のアンケートを取るときは、郵便番号と住所は別々の回答枠を設けるべきだと学んだ。csvをクリックポストに読み込ませたところ、送料だけで1万円近くなることが判明して、ひょえーと思った。自家通販自体は初めてではなかったので、家に梱包資材の在庫は余っていた。個人の好みだと思うが、下記を使っている。

【A5/厚さ2.5cm】定番ダンボール箱(ネコポス対応)
https://www.bestcarton.com/cardboard/box/0413.html

【国産】テープ付 角形6号【 A5サイズちよっと大きめ用 】透明OPP袋(透明封筒)【100枚】30ミクロン厚(標準)170×250+40mm
https://amzn.asia/d/6fSRjlo

OPP袋に本を入れて、それを段ボール箱に入れる。若干かさばるが、丈夫そうだからという理由でこの形式を用いている。

 

④入稿後〜文フリ前日(2023.10.24〜2023.11.10)

この期間に行ったことは、SNSでの告知やお取り扱いいただく書店さまとのやりとりが主だった。

10月28日、現物が届いた。今回は、半分を直接会場搬入(つまり手ぶらで会場入りしてよいということ)、半分を通販など用に自宅へ発送してもらった。半分の量にもかかわらず段ボール箱にずっしり4箱分届いて、280部という量の膨大さを改めて実感しちょっと怖くなった。絶対にたくさん売りたいと決意を新たにした瞬間だったと思う。

何かしていないと落ち着かず、とりあえずPOPをつくってみた。文フリ当日に使用することにして、残りは一部の書店さまにも送ることにした。
それから、献本を郵送する参加者にあててお礼の一筆箋を書いた。ざっと50枚程度は書いたと思う。必須ではないけど、造鳩會で本を作っているときから、参加いただいた方には御礼の手紙を書いている。

本なんて誰でもつくれる時代なので、書店さまにお取り扱いを検討いただくにあたっては、なぜその書店で自分の本を取り扱ってほしいかが大切だと思う。この件についての詳しい話は下記のブログを参照していただきたい。

ちなみに、条件は7割掛の買い切りで提示させていただいた。書店さまお取り扱いについては、先方からお声がけいただいた件が4件、こちらからお声がけしてお取り扱いいただけたのが1件、審査・返信待ちが3件だった(2023年11月6日時点)。お声がけいただいたのは、これまでに付き合いがあった書店さまや、鳩アンソロジーに店主が参加しているケースなどがあった。また、こちらからお声がけしようと考えていたところ、先方から先にお声がかかったケースもあった。
こちらからお声がけしたケースは計4件になるが、そのうち最も取引をしたかったのは、福岡にある鳥の本を多く扱っている書店さまだった。おそらく日本唯一「鳥の本」のコーナーが店内に設けられた書店で、鳩アンソロジーと相性が良いと考えた。遠方かつ連絡先は公開されていなかったので、不躾ながらInstagramのDMからご連絡させていただいた。「自分がどういう人間であるか」、「今回作った本はどのようなものか」、「なぜこの書店に置かせていただきたいと考えたのか」の3点を伝え、まずはサンプルを一冊お送りするので判断していただけないかとご連絡した。すぐにお返事が来て、無事にお取り扱いいただけることになった。その他にお声がけしている書店さまは、ホームページのお問い合わせフォームや、公開されている場合はメールアドレスからメッセージをお送りした(中には、お問い合わせフォームから営業しないで、と明記されている書店さまもあるので注意が必要)。ZINEの取り扱いに特化した店だと、あらかじめ審査申し込み用フォームが用意されていることがある。しかし、そうした店はよほど話題の本か、商業出版に比肩するクオリティの本でないと採用されないような印象がある。試すだけ試してあとは運頼みという感じだ。請求書と納品書のフォーマットは、適当にテンプレートをインターネットから落としてきて使用した。本を納品する際に同封しておく。

文フリ当日が近づいてきたので、改めて告知画像をつくった。どうしても売りたいので、文フリ当日も100枚だけチラシを配ろうと考え、同じデザインでA4サイズのチラシを制作した。告知ツイートは下記リンク先。本について、目次について、文学フリマについて、通販について、書店取り扱いについて、をツリーにまとめて投稿した。

https://x.com/hitohitsuji/status/1721409209735278774?s=20

引き続き、文学フリマ東京前には告知ツイートやRTを頻繁に行った。また、参加者の皆さまに宛てて、現在の書店お取り扱い情報などをまとめたり、当日会場にいる時間帯などを添えたりして、文学フリマ直前に諸連絡をお送りした。

 

⑤文フリ当日(2023.11.11)

3〜4度目の、出店者としての文学フリマ東京だったが、回を追うごとにどんどん人が増えている。出店者の事前入場の行列がものすごかった。なんとか入場して設営する。ちなみに、私の文学フリマ東京への持ち物リストは下記である。当日実際には使わなかったものもあるが、とりあえず前日に準備したものを挙げておく。

文フリ携行品リスト

  • ピンズ→鳩アンソロジーを売るということで鳩のピンズを服につけていった
  • メモ→当日売れた数などを記入する用
  • スケッチブック→ブースに掲示しなければならない連絡事項が発生した場合などに便利
  • 青い封筒(入場証とか入ってる!)→文学フリマ公式から送られてくる封筒のこと。出店者証とか入ってて大事。
  • 養生テープ→ブースで布とか物とか固定する用
  • 値札→百均でそれっぽいカードを買って使っている
  • ホッチキス→使わなかった
  • 紙袋→あると何かと便利
  • はさみ
  • カッター
  • マスキングテープ
  • マーカーペン
  • ペン
  • お菓子の缶→文房具類をまとめるのに使ったり、小物を入れたりする用で、絶対お菓子の缶が必要なわけではない
  • ポスターとめるやつ(什器?)→A4〜A3サイズくらいまでを留められる、ポスターを掲示しておくやつ。スーパーとかで見るやつ。
  • 本立てるやつ→小さな組み立て式のブックスタンドと、書見台を使っている
  • 釣り銭→コインケースあると便利
  • お札置くやつ→正式名は「カルトン」と言うらしい、手渡しでお金のやり取りをすることのほうが多いので正直あんま使わない
  • 売る本やコピ本など
  • ファイル(なんとなく)
  • 黒い布→手芸屋さんで買った、机に敷いておく

今回は、『鳩のおとむらい 鳩ほがらかアンソロジー』以外に、藤井佯個人のコピ本やクリアファイルなどのグッズも販売した。当日は、下図のような「おしながき」画像を印刷して掲示しておいた。

『鳩のおとむらい 鳩ほがらかアンソロジー』は事前にSNSでの反応もよく、関係者も多かったため、そこそこ売れると見込んでいた。そこで、当日会場搬入部数は140部にした。しかし実際に、(現地で手渡す分の献本25部を除いた)115部が売り切れてくれるか、どのくらいのペースで売れるのかなどは完全に未知数で、覚悟を決めるしかなかった。

当日は、私のほかに造鳩會(出店ブースのサークル名)の伊東黒雲さんが手伝いに来てくれたので、1時間ほど抜けて買い物をする時間をとることができた。もし一人で出店する場合は、スケッチブックなどに「しばらく抜けます」など書いて、隣のブースの人たちによろしく伝えてから店を抜け出す必要があるが、それをしなくて済んだのは幸いだった。あと、発売部数が100を超えてくるとシンプルに一人じゃ限界があるな、とも今回実感した。チラシにいたっては、用意したにもかかわらずバタバタしていてなかなか配ることができなかった。ブースの数が増えたことで一般参加者にもどことなく余裕がなくなっている感触がある。あまりチラシなどは受け取ってもらえなかった(一方で、チラシを受け取ってくださった方がそれを見てそのまま購入してくださったケースもあった)。

ありがたいことに、16時をすぎたころ、鳩アンソロジーは完売した。完売の願掛けにA4サイズで「完売のお知らせ」を作っておいたのだが、実際に使用することになるとは思わなかった。ダンボール4箱分の本が売り切れ、ありがたい限りだった。

すかさず通販に誘導する、の図。

文学フリマ東京は、酸素濃度が薄い。かなり疲れる。次々回からは東京ビッグサイトでの開催になるらしい。イベントの規模が大きくなっていくことに様々な感慨はあるが、一出店者としてはますます売れる部数を読みづらくなるなあという気持ちが強い。今回はほとんど祈りのような気持ちで280部も印刷したが、1800ブースを超える参加があるなかで、鳩アンソロジーにたどり着いてくれるのは奇跡に近いよなと思う。完売してよかったが、この数字が誰かの参考になるかと言われると難しいだろうなという気もする。

 

⑤文フリ以降(2023.11.12〜)

溜まっていたBOOTHの発送作業をこなした。また、現地受け取り希望者で当日お見えにならなかった方に、献本郵送用の住所を知らせるよう連絡した。書店に卸した本の中に汚破損品が一冊あったらしく、追加で一冊お送りする作業をした。それから、どこで何部売れたのかを細かく数えてみた。下記の通りだった。(2023.11.12時点)
・献本分(自分の分含む):77部
・文学フリマ東京:105部
・書店お取り扱い:42部
・通販:25部
・サンプル(書店お送り分や、文フリ見本誌など):5部
計254部
全体では、予備でいただいた3部を含め283部あったので、手元には残り29部となる。残りは、かぐやフェス(SFレーベルKaguyaが主催するオフラインイベント。参加者はブースを出店することができる)や、BOOTHでの通販で売っていくことになりそうだ。印刷費は回収できた。少し純利益が出そうなので、一部は国境なき医師団等に寄付しようと考えている。#FreePalestineNov12

最後に、『鳩のおとむらい 鳩ほがらかアンソロジー』のBOOTH通販ページへのリンクをもう一度掲載しておく。

https://yo-fujii.booth.pm/items/5142375

以下は余談である。
私は、AdobeCCの各ソフトについて初心者レベルのスキルがあり、いわゆるAdobe税と呼ばれるサブスクリプションにも加入している。またデザインやコピーライティングも素人並みにはこなせるスキルがある。自慢をしたいわけではなく、昨今の同人誌・ZINEづくりなどは、これらのスキルが良くも悪くも重視されるよな、という素朴な気持ちがある。本当は、つくる気持ちだけで本ができるならばそれが最高だと思うし、InDesignやIllustratorを持っていない人にもやさしい記事が書けたらよかったのだが、そこだけは心残りである。さらに、この時期の私はほぼ無職同然で、時間だけはとにかく持て余していた。作業に充てられる時間がフルタイムの労働者より多かったということは、この記事をお読みいただくうえでご理解いただきたい。労働をこなしながら、この規模の本を作るのはかなり大変だと思う。そのうえで、この記事が何らかの参考になれば幸いだとしか言えないが、心からそう願っている。世の中に新しい本が生まれるのはとても嬉しいことなので。ついでに鳩アンソロジー買ってもらえるとさらに嬉しい。よろしくお願いします。

長くなりましたが以上です。参加者の皆さん、そして鳩アンソロジーをお手にとっていただいた方々、告知ツイートを拡散してくださった皆さん、どうもありがとうございました。