同人誌:故郷喪失アンソロジー収録作の公募について

2024-01-24News故郷喪失

表題の通りです。

このたび、「故郷喪失」「故郷喪失者」をテーマとした広義のSF(スペキュラティブフィクション)、ファンタジー小説、詩、等の文芸作品、またはノンフィクションを応募してみようと思い立ちました。きっかけは些細な思いつきです。私は自身を故郷喪失者であると自認しており、私以外の故郷喪失者の話を聞いてみたくなった、というだけです。ないものはつくらなければ存在しないままなので、自分で企画することにしました。

【追記 2024.1.27】
「故郷喪失」というテーマと「SF/FT」というジャンル、どちらに重きを置くかといえば、断然「故郷喪失」です。必ずしも、SF/FTでなくて結構です。ご自身の作品のジャンルに迷うことがあっても気にせずお送りいただけますと嬉しいです。
また、どのような作品を求めているかについて少しだけ追記させていただきます。今回に限っては「自分の話」を求めています。これは実際に起こったことという意味に限らず、自分を起点として見えた世界のこと、という意味合いです。実感を文章に乗せてほしいと感じています。応募資格に「故郷を喪失したと自認している方」と制限を設けたのはそのためです。また、「テーマは故郷喪失」という言い方も不十分かもしれません。より正確に言うならば、「故郷喪失をあなたの言葉で翻訳してください」というふうに言い換えることができます。故郷喪失という言葉には複数の意味合いがあります。そのどれを採用しても構いません。私自身、故郷喪失とは一体どういうことなのか、それが分からなかったのでこの企画を立ち上げています。この本をつくることを通じて、故郷喪失について考えたいと思っています。ぜひ、本当のこと(これは、繰り返しますが実際に起こったことという意味に限りません)を書いてください。匿名での応募も可能です。精一杯受け止めます。様々な制約があり、すべての作品を採用できないことがほぼ確定しています。しかし不採用であるということで作品そのものの価値が損なわれることは決してありません。あなたの作品をお待ちしております。

下記が応募要項になります。

【応募要項】

・募集作品:日本語で2,000〜10,000程度の①文芸作品、②ノンフィクション(エッセイ、論考、コンテンツのレビュー等)。それぞれ若干数採用予定。
・応募締切日:2024年3月17日(日)23:59まで(日本標準時)
・賞金:些少ですが、採用作には4,000字以上20,000円、4,000字未満10,000円お支払いします。
・応募資格:広義の故郷喪失者であること。故郷を喪失したと自認している方。プロ・アマは問いません。
・テーマ:故郷喪失にまつわる、広義のSF/FTに関わる文章。全年齢対象作品とします。
・下読み、審査:藤井佯が行います。造鳩會から文藝同人誌『異界觀相』vol.1,vol.2、個人名義で『鳩のおとむらい 鳩ほがらかアンソロジー』を制作しています。

 

【注意事項】
・応募作品は2024年5月末に同人誌(印刷および電子書籍)にて出版いたします。またWEBで公開される可能性があります。
・著作権は投稿者に帰属します。
・複数応募可とします。
・選考に関するお問い合わせには応じられません。
・特定の人物、属性への差別表現、ヘイト表現を含む作品は固くお断りさせていただきます。

 

【表記について】
・ルビを振る
 【】にて範囲の指定、/にてルビ文字の指定をお願いいたします。(例)【造鳩會/ぞうきゅうかい】
・英数字
 原則として全角漢数字を使用してください。ただし、長い英数字の場合は半角でも可とします。
・縦中横
 二桁の数字や「!?」など、縦中横を使用したい場合は、個別にメール本文にてご相談ください。
・全角スペース
 行頭で全角スペース一文字分のスペースを開けてください。ただし「」の前にはスペースは不要です。
 「!」や「?」の後には全角一文字分のスペースを開けてください。ただし、鉤括弧を閉じる際には必要ありません。

 

【その他】
・指定のGoogleフォームからご投稿ください。
・「匿名での掲載」も可能です。「匿名での掲載」を選択した場合、本誌において筆名は公開されません。ただし、謝礼のお振込や献本の送付などに必要なため、作品が採用された際には個人情報をお伺いします。
・投稿に必要なものは、①テキストデータ、②筆名、③メールアドレス、④投稿カテゴリ(小説・詩/ノンフィクション)です。
・採用の場合は後日、謝礼のお振込みや献本の送付に必要な情報をお伺いします。
・印刷費、宣伝費、送料等の充当のためクラウドファンディングを実施する可能性があります。
・販売場所(リアル書店、即売会、通販など)や部数等は検討中です。
・故郷喪失者の定義は書き手に委ねます。
・採用者には3月中に、応募時記載のメールアドレス宛にご連絡いたします。
・なぜSF/FT?→「故郷喪失」というテーマと相性が良いと思ったからです。ジャンルにこだわらず気軽にご応募ください。
・その他ご質問やご不明な点がございましたらお気軽にお問い合わせください。
 お問い合わせ先:yo.fujii.hitohitsuji@gmail.com
 Twitter(現X):@hitohitsuji
 Fedibird:@hitohitsuji@fedibird.com

 

【応募フォーム】

https://forms.gle/mFYkoVG6Q3x3yLUh7
こちらからご応募ください。

 

ご応募をお待ちしております。

 

【2028.1.28 追記】

なぜ「故郷喪失者」でないと応募できないのかご質問とご意見をいただいたため、下記に主催者としての見解を追記いたします。たびたびの追記となりまして申し訳ございません。

なぜ応募資格を設けたのかについて、最も直接的な理由は、私自身が広義の「故郷喪失者」であり、この本をつくることによって、私以外の「故郷喪失者」と出会いたかったからです。

私の故郷、地元はいま現在も存続しております。その点で、私は故郷を喪失してはいません。しかし私は、諸事情により実家との連絡を絶っています。そして、先日文フリに参加した際、どこからかその情報を得た親族からブースへの突撃を受けました。そうした点で、もはや私には身の安全を確保したうえで帰ることのできる実家や故郷は存在しなくなったといえます。私は上記の理由から、自身を「故郷喪失者」であると自認しています。

この情報(自身がそうした意味での故郷喪失者である旨)を応募開始時に開示しなかった理由は、親族に私の筆名が知られてしまっている以上、ただでさえ「故郷喪失」というテーマの本をつくるという事実により相手の反発心を招くリスクがあるうえに、それ以上のリスクを冒せないと判断したためです。自身の身の安全を優先し、自身がどのような意味において「故郷喪失者」であるかまでは事前に開示しませんでした。

また、これを機に「故郷喪失」ということについて考えてほしいという意図もありました。たとえ自身に故郷を喪失したという実感がなくとも、そもそも故郷とはなんなのか、失う故郷が自身にあるのか、喪失とはどういった状態を指すのか、もしかすると自身も当事者ではないのか、といったことを考えるきっかけとしてほしかったのです。たとえば、自身が学生時代に入り浸っていたサイトが閉鎖されることは故郷喪失にあたるでしょうか。自身の大学が移転した場合は? 実家が取り壊しになった場合は? 故郷も実家も健在だがどこか喪失感を覚える場合は? あるいは、TwitterがXになったことは? 私たちはどのような点において「当事者」となるのでしょうか。このテーマと同時に応募資格を提示することによって、一度そのことを各自で考えていただき、自身が故郷喪失者に該当すると感じたのなら、ぜひこの機会に言葉にして、実感を込めた作品をつくりだしてほしい。そうでなくても、今後何かに活かしていただけるとこのうえなく嬉しい、と考えての判断でした。あえて、このケースは故郷喪失である/ではないと私から個別に判断することはありませんし、そもそも私の立場からそのようなジャッジを下すべきではないと考えています。そうした理由から、これは故郷喪失にあたります、と具体的な例を提示することは避けようと決めていました。あくまで、自身が故郷喪失者であるか否かという判断は各々の解釈に委ねたいと考えております。「私には応募の資格があるか」といった個別のお問い合わせには回答できかねますのでご了承ください。

しかし、「どうしても作者が故郷喪失していなければならないのか」という疑問はごもっともかと思いますし、説明不足であったと感じています。

今回は、より当事者性を重視した本をつくるべく、このような制限を設定しました。もちろん、当事者でなければそのテーマについて語ってはならないわけでは決してありません。故郷喪失というテーマは、ある種、文学の伝統でもあるでしょう。高度成長期の都市開発による故郷喪失、あるいはグローバル化による故郷喪失という大きな流れもあります。また、日本においてはヒロシマ、ナガサキ、ミナマタ、そしてフクシマなどの積み重なりがあります。そして、現在「故郷喪失」を語るにあたって、パレスチナや能登の状況を無視することは決してできないでしょう。そのうえで、そうした流れとはまた別に現代を生きる私たち個人の語りがあります。そのような普遍性と特殊性を持つテーマでありながら、これまで「故郷喪失」を主たるテーマとして掲げた文芸作品が十分にアーカイブされてきたかと問われると、私にはまだ、その営みが不十分かつ発展途上であるように思えます。

そこでまず、故郷を喪失したと感じている方、そしてその実感を文芸作品にて表現できる同胞を見つけたいと思いました。現代において、まずどのような形で「故郷喪失」というものが現出しているのかを知りたいという学術的興味とともに、先述したように「自分のように、故郷喪失の感を抱きながら生きている人々を見つけたい」という気持ちが強くあります。それが、同じ時を生きる「故郷喪失者」たちへささやかな光を与えると信じているからです。

先日、特定の都道府県を舞台としたSF作品の公募を見かけました。その公募の応募資格は、その都道府県に居住している、またはしたことがある、ことでした。それを見て、「もし(私の出身県が舞台になり)私の番が来たとして、私は屈託なくその地方についての小説を書けるだろうか」と考えたことが、そもそもこの「故郷喪失」というテーマを思いついたきっかけでした。今後どの地方が取り上げられたとしても、そこからこぼれ落ちる人は出てきます。なるほど、書ける地域があるということは、一種特権的なことであることに違いないでしょう。どこかの地域を選ぶということは、どこかを選ばないということと同義です。しかし、その企画の趣旨はそこではなく、これまで創作の舞台とされてこなかった場所に、そこに紐付く語りに光を当てることなのだと私は認識しています。同様に、故郷喪失者というカテゴリをつくることによって、そこに含まれない人々が登場することは自然な成り行きです。それでもなお、まずは「故郷喪失者」たちの声を聞くことを私は選択しました。この本がどこまで遠くへ届くかはわかりませんが、この本をきっかけにしてまた次は別の人々にスポットライトが当たり、そしてまたそこからも疎外されていた人々に……というふうに影響を与えていける、そんな本を理想として全力で故郷喪失アンソロジーを編む心算です。

以上になります。応募要項について何度も追記を繰り返し、至らない点も多々あり情けない限りですが、私なりに誠実に対応していきたいと考えておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。

2024.1.28 藤井佯