【ネタバレあり】映画『BLUE GIANT』感想

Diary映画感想

『BLUE GIANT』(2023)・119分

公式サイトから引用

https://bluegiant-movie.jp/

観た日付:2023/3/9・10

どこで観た:映画館

あらすじ(コピペ)
「オレは世界一のジャズプレーヤーになる。」
ジャズに魅了され、テナーサックスを始めた仙台の高校生・宮本大(ミヤモトダイ)。
雨の日も風の日も、毎日たったひとりで何年も、河原でテナーサックスを吹き続けてきた。
卒業を機にジャズのため、上京。高校の同級生・玉田俊二(タマダシュンジ)のアパートに転がり込んだ大は、ある日訪れたライブハウスで同世代の凄腕ピアニスト・沢辺雪祈(サワベユキノリ)と出会う。
「組もう。」
大は雪祈をバンドに誘う。はじめは本気で取り合わない雪祈だったが、聴く者を圧倒する大のサックスに胸を打たれ、二人はバンドを組むことに。そこへ大の熱さに感化されドラムを始めた玉田が加わり、三人は“JASS”を結成する。
楽譜も読めず、ジャズの知識もなかったが、ひたすらに、全力で吹いてきた大。幼い頃からジャズに全てを捧げてきた雪祈。初心者の玉田。
トリオの目標は、日本最高のジャズクラブ「So Blue」に出演し、日本のジャズシーンを変えること。 無謀と思われる目標に、必死に挑みながら成長していく “JASS”は、次第に注目を集めるようになる。「So Blue」でのライブ出演にも可能性が見え始め、目まぐるしい躍進がこのまま続いていくかに思えたが、ある思いもよらない出来事が起こり……
情熱の限りを音楽に注いだ青春。その果てに見える景色とは—。

観たきっかけ
鬱々としていて、それを取っ払ってくれるような作品が観たかったから。BLUE GIANT自体は全く読んだことがない。世界一のジャズプレイヤーになる話、ということしか知らなかった。玉田がドラムってので新鮮に驚けてよかった(公式サイトとかも観てなかったので本当に映画で観て初めて知った)。

コメント
・とにかく圧倒された。どうやって帰ってきたのかわからない。
・映像表現めっちゃいいなーと思っていたら、アニメ版モブサイコの監督だったのか。納得する。音楽を聴いて衝撃を受けているときの脳内をそのまま映像化したかのような。特にラストライブのアンコール曲は圧巻。
・コットンズで雪祈がソロで完全燃焼したあとに映る月が欠けていたところで鳥肌たった。雪祈はスマホのロック画面を月にしていて、本人の口からも、「月旅行」という言葉が出てくる。「月まで行くとして、いま熱海か、もしかしたら品川くらい」。この場合、So Blueで演奏することが雪祈にとっての月面到達。
・ちなみにJASS最後の演奏が終わった後は満月が出ている。
・順当に時系列で考えると、「コットンズ演奏→最後のライブでピアノフォルテとしての雪祈の完成」=「欠けた月→満月」なんだろうけど、コットンズ演奏後の月を「満ちてその後欠けた月」と解釈するのも好き。コットンズの時点で既に雪祈は「完成」していて、一度新月(事故)を挟んだのち再び「満ちた」という見方。
・先述の「月旅行」の話で言うと、「そんなの降っては消える話」と、もらったレコード会社の名刺について雪祈が消極的に言うのに対し、大が「でもこの人は、月まで一緒に行こうって言ってくれたんだ」って返すのがめっちゃ良かった。
・劇中では明示されなかったが、玉田は東大生なのではと思った。のめり込む才能の持ち主というか、あの三人の中にいると一番主人公っぽく見えるが、一番器用なのが実は玉田。サッカー(県大ベスト8)、勉強(東大)、ドラム(二人についていけるだけの実力。So Blueでの演奏)というふうに、全てにのめり込んでコンプしていくことができる。常に何かのめり込むものを探していて、そうしないと生きていけない人。だから玉田だけインタビュー動画がある。
・インタビュー動画はおそらく「前線から去った人たち」だけで構成されていて、玉田のジャズの物語はあそこで完全に終わったので、いまは別の世界で別のものにのめり込んで成功しているのだと思う。対して、雪祈はエンディング後にも示されているようにまだジャズの前線で戦い続けている。戦い方は変わったかもしれないけど。こればかりは原作読んでないのでわかりませんが。
・おじさんが音でわからされる映画。出てくるおじさん全員好感が持てる。音楽の映画なので当然だけど、言葉を最大限省いているのが好印象だった。音を聴けばわかる。個人的おじさんランキング。
 1位
 サインを貰い損ねた豆腐屋のおじさん
 2位
 新橋駅でビラを受け取ったおじさん
 3位
 成長するドラムを観にきているおじさん
 よろしくおねがいします。
・宮本大が別に馬鹿ではないことが節々の演出や言葉選びから伝わってきてすごいよかったなと思う。
・大→黒猫、青い炎、雪祈→雪、月、で表現されていることは読み取れたけど玉田だけ読み取れなかった。汗とか? もしくは、箸かもしれない。「俺のドラム、クソだ」からのドカ食いは気持ちよかった。
・最初観て、呆然として、気がついたら次の日に二回目のチケットを取っていたのだが、二回目の方がぼろぼろと涙が出てきた。音だけで鳥肌が立つ。休職して以来、全然音楽を聴いていなかったことに気づいた。無音だった家で久々に、BLUE GIANTのOSTをリピート再生している。ありがたい。
・BLUE GIANT観た翌日に、たまたま古本屋を見つけて入店したら、店主がジャズ好きなのか、ジャズレコードも大量に置いているところだった。しばらく店内で本を物色していると、ジャズやってるっぽい老人が店主を訪ねてきて世間話を始めた。「自分で作曲やった曲に拍手がもらえるとやっぱり嬉しいもんでね」、「プロとは違うけど生きているうちはライブし続けたいよね、活動ってのは生きてる人の特権なんだから」などと話し込んでいた。この人BLUE GIANT観たんじゃね? と思うくらいの世界観のシンクロ率で、タイムリーな体験ができてすごかった。