野田昌宏『新版 スペース・オペラの書き方』感想

DiaryC0195,書籍感想

野田昌宏『新版 スペース・オペラの書き方 宇宙SF冒険大活劇への試み』(ハヤカワ文庫)

公式サイトから引用

https://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/20409.html

読み始め:2023/2/19  読み終わり:2023/2/20

あらすじ・概要
魅力的なキャラクターとは? ストーリーの盛り上げかたは? 作ったアイディア・カードの活用方法は? といった創作の秘訣から、SF作家のワープロ・ソフト大公開まで、具体的な創作方法をわかりやすく面白く語った文章読本を、文庫化にあたってバージョンアップ! これを読めばあなたもプロ作家になれる?

読んだきっかけ
吉田親司『作家で億は稼げません』にておすすめされていたため。

コメント・感想
 なんといっても語り口が面白い。居酒屋でおじさんの話を聞いている感じ。時代だなあと思うのだが、野田昌宏さんは「京大カード」を使っていたらしい。時代、というのはその呼び名が懐かしいということで、京大カード自体はいまでも知的生産においてばりばりに使えるテクニックだと思っている。その京大カードの話をしているうちに、こんなカードがあった、あんなカードがあったと野田氏の話が脱線していくのだが、そのうちの一つがあまりにも面白くて脳が沸騰した。ここに全部書くことはしないので、もし機会があれば「レオ/車検」の項目を読んでみてほしい……。163ページあたりだ。
 創作指南の面で役に立ったのは、やはり「右往左往シート」の使い方だろうと思う。これから長編を書こうとしているので、プロットやストーリーのまとめ方には悩んでいた。やはりページをめくったりする手間なく一覧で見れたほうがいいのか。これは自身の実感からしてもそう。いまは、小説のネタやプロットを自由帳にうわーっと書いて、それをPCのメモ帳に清書して、それを見ながら書くという方法を取っている。だが、このやり方じゃ長編は書けないなとうっすら感じていた。なぜなら見開き2ページのノートに収まるプロットの量は、私の場合は短編〜中編くらいで限界だから。自由帳のページが切り替わると頭も切り替わってしまう感じがして、どうも調子を合わせたままネタ出しやプロット整理ができなくなる。どうしようかと思っていたが、確かにノートの方を物理的に拡張するのが一番手っ取り早そうだ。しかも、右往左往シートでは10ページずつ何が起こっているかまとめること、という指針を与えてくれているのがありがたい。
 また、p.234-235の表がよかった。私はとりあえずコピーして壁に貼った。ストーリーを作る作業の流れが書かれた表なのだが、必ずしも上から下へ進んでいくわけではなく、行きつ戻りつ、まさに右往左往しながら作品の形が少しずつ出来上がっていくさまが鮮やかにまとめられている。「七転八倒」しているときの導き手になりそうな表だった。自分がいまどこで悩んでいるのか、この表を見て一つ一つチェックしていけば、どこかから糸口が見つかるかもしれない。見つからないかもしれないけど……。
 あと笑ってしまったのが、「スペース・オペラ執筆の能率向上に資する常備薬は?」という項。即答で「ユンケル黄帝液を三本ばかりまとめて飲むというのは利く」と書かれている。そうなんだ。覚えておこう。
 全編通じて、スペース・オペラへの愛が熱い本だった。創作しない人でもSF好きなら楽しめると思う。最後の方に、それぞれの作家の仕事道具を野田氏がインタビューした(?)項目があって、各作家の回答が面白い。この時代はまだワープロなんですね。手書き派とワープロ派がいて、それぞれにこだわりがある。巻末におすすめの作家リストも載っていてありがたいです。