松岡圭祐『小説家になって億を稼ごう』感想

DiaryC0295,書籍感想

松岡圭祐『小説家になって億を稼ごう』(新潮新書)

公式サイトから引用

https://www.shinchosha.co.jp/book/610899/

読み始め:2023/2/13  読み終わり:2023/2/13

あらすじ・概要
いま稼げる仕事はユーチューバー? 投資家? いや「小説家」をお忘れでは? ミリオンセラー・シリーズを多数持つ「年収億超え」作家が、デビュー作の売り込み方法から高額印税収入を得る秘訣まで奥の手を本気で公開。私小説でもライトノベルでも、全ジャンルに適用可能な、「富豪専業作家になれる方程式」とは? ここまで書いていいのか心配になるほどノウハウ満載、前代未聞、業界震撼、同業者驚愕の指南書!

読んだきっかけ
小説家になって億を稼ぎたいから。

コメント・感想
 実は一度読んでいるのだが、創作指南本あるある「その作家の小説を読んだことがない」が発動していて申し訳なかったので、つい最近『万能鑑定士Qの事件簿』を購入した。それで、万能鑑定士Qを読んでから再び『小説家になって億を稼ごう』を読んだら読み味が変わるかもな……と思っていたのだが、なんか我慢できずにQを読む前にこちらを再読してしまった。……そんなグダグダな経緯で読んだのだが、忘れている箇所が多くて勉強になった。『想造』のプロセスは実践したことがまだないんだけども、『SFの書き方』で新井素子さんが喋っていたのと根本は似ているのかもな、と思った。なんでもいいから登場人物を喋らせる、と新井さんは仰っていたと思うけど、松岡さんの場合はなんか瓶の中にビオトープをつくってそれを観察しているというイメージだなというのが読んでいての印象。もしかすると、長編を書くにあたって誰もが自然とやっていることなのかもしれない。(それにしても、短編だけじゃ一冊の本にできないから長編を書け、は清々しい。確かにその通りなんですよね)。とても文章が淡々としているのだが、「ああこれ実際に大変だったんだろうな……」と、明らかに著者の経験をもとに書かれていることが分かる章があるのが面白い。映像化の話怖すぎる。
 第三章の「デビュー作がヒットした時、しなかった時」の文章が怖すぎて、読みながら辛いことになってしまった。売れているときは、すぐには作家の身の回りで変化があるわけではないけど手応えは確かに感じている。逆に売れていないときは誰の目にも明らか。こ、こわすぎる……。「本の題名に触れたSNSのコメントは、版元の新刊案内情報のみ。本に言及する個人ブログも、カバーデザイナーの『本の表紙を担当させてもらいました』という記事だけ。アマゾンのランキングはさっぱり上がらず、編集者からのメールも来ない。」や、やめて! 助けて……! 百合文芸に作品を投稿したとき、こころがふたつあって、一つは「初めて投稿したには読んでもらえたし、他のコンテスト応募作よりもいいねついてるな」という気持ち。もう一つは「誰かが作品をシェアして感想を呟いているわけでもないし、いつもながら大して反応がないし」という気持ち。もちろん、宣伝ツイートにはいいねもRTもそこそこもらったし、感想もFFの方や友人から複数いただけてとても嬉しかった。そして、pixivの方でも、いいねやブックマークの数から相対的に「短編部門」の中ではわりとやれてる方なんじゃないかという自信にはなった。だが、まだ射程距離が全然足りない。今の自分の実力はここなんだな、というのがすごくシビアに伝わってきた。自然と誰かに勧めたくなるし、読んだことを言いたくなる、そこまでの力を持った作品をつくれるようになりたい。書き続けるしかない。本書の中でも、評判がどうであろうがあなたがするべきことは良い小説を書くこと、という姿勢は一貫している。本当に、それしかできることってないもんな。
 冲方丁さんの『生き残る作家、生き残れない作家』は、Kindleで冒頭だけサンプルを読んだのだが、金銭関連でかなり苦労をされたようで、合わせて読むと良さそうだなと思った。あと、タイトルが対応している吉田親司『作家で億は稼げません』もまだ読めていないので、こちらも読んで本書と比較してみたい。

次に読みたい
吉田親司『作家で億は稼げません』
冲方丁『生き残る作家、生き残れない作家 冲方塾・創作講座』