Works,公募公募,坊っちゃん文学賞,小説

 祖母はよく物を失くす人だった。ちょっとしたもの、飴だとか消しゴムだとか、そういったものならいいのだけど、実印を失くしたこともあってそのときは大騒ぎだった。ちょうど遊びに来ていた母と私が捜索に乗り出し、しかし祖母ひとりだけのほほんとし ...