多賀盛剛『幸せな日々』感想
多賀盛剛『幸せな日々 第一短歌集』(ナナロク社)

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読み始め:2023/7/5 読み終わり:2023/7/5
あらすじ・概要小社主催の短歌作品公募企画「第2回 ナナロク社 あたらしい歌集選考会」より、歌人の岡野大嗣さんが選出した、多賀盛剛さんの第1歌集を刊行いたしました。
読んだきっかけ
異界觀相にも短歌を寄せていただいている多賀さんの初短歌集。
コメント・感想
いつもはじめににんげんがいる、にんげんがいるしかみさまもいる、それで、にんげんとなんかの反応があって、まずにんげんがあって、なんかがにんげんを必要としていて、そしてにんげんがなんかを発見して、にんげんとなにかがわかちがたくなる、いずれにんげんはなんかを忘れてしまう、それでもなんかはなんかのまま美しくて、そういう瞬間が何度も描かれる。「ぶらうんかんは、どんなものでもおさまるから、ひとのかたちはそのままでよかった、」ぶらうんかんがあって、ぶらうんかんのなかにはなにかがおさまらないけんし、どんなものでもおさまるんやけど、だからこそにんげんはぶらうんかんとであったとしてもかたちを変える必要はなくて、にんげんとぶらうんかんとはそうやっていきていく、「べつに、じゅうりょくがあるとかでなく、まぶたがいつも、したにおちた、」にんげんがさきでじゅうりょくがあったことがわかって、でもじゅうりょくがあるとかでなく、まぶたはいつもしたにおちて、にんげんはねむっていた、にんげんはねむって、おきて、ねむって、おきて、いきてしんでいった、「おとしたら おちていくほうを ひとにして おちないほうを そらにしました」これも、じゅうりょくがあったことがわかって、おとしたらおちたほうをひとにして、おちなかったほうはそらになった、そうして、にんげんとそらはくべつされた、多賀さんの短歌群は創生神話のように見える。しかし、神話というからには遠く昔の話なんだなんていうことはなく、それは続いている。今もこの一瞬も。アボリジナルのドリームタイムのように、いやもっと「神話」が「神話」って言葉を獲得しないほどに近い場所に、こうしたせかいがあって、こうしたせかいをみることが得意なにんげんがいて、そうしたにんげんがかたらされている。語らされるために、ひらがな、関西弁(うまれのことば)、句読点、空白が必要なんだと思う。そうした文法があって、それはにんげんのことをずっとまっていた、それでみつけたのが多賀さんやった、わたしたちがふつうだとおもっていることをそうでないように見るとき、あるいはふつうだとおもっていることがふつうでなかったときのはなしを振り返るとき、こうした言葉が必要で、それも多賀さんがあとがきで語るように、人間が発明したというよりは、この文法が人間を必要としていた、ということで。それで、いま、多賀さんのこの短歌集がなかったころのことって考えられるだろうか。もう、にんげんはこの歌を知ってしまったので、この歌がなかったころのことについてはもう語ることができんくて、もうこの歌とよくわからんくらいまざりあって、なにがなんだかわからんくなってしまうしかないんでなかろうか。
良かった歌
べつに、じゅうりょくがあるとかでなく、まぶたがいつも、したにおちた、(Introduction)
にんげんは、にんげんとおんなじひじゅうをしてたから、からだのなかにしずまへんかった、(Introduction)
さがしつづけたけど、にんげんはそこでうまれてしんだから、いりぐちはなかった、(tower)
びっくりするくらいおおきくなると、おんなじおおきさのひとにやっときいついて、びっくりした、(tower)
だれがながしても、なみだはいつも、ほしのまんなかにむかっておちた、(tower)
まばたきのあいだに、せかいはどれだけかわってええんか、ふるいえいがをさんこうにした、(tower)
ぶらうんかんは、どんなものでもおさまるから、ひとのかたちはそのままでよかった、(ethos)
おとしたら おちていくほうを ひとにして おちないほうを そらにしました(blue)
なんか、よるにのぼると、てんごくも、それなりにくらそうなかんじがした、(twice)
かみさまは、いるだけでもかんしゃされて、いいひんだけでもわるくいわれた、(pink)
(前略)まあ、ぼくがそれをみてわからへんだけかもしれへんけど、つかれてるどうぶつってみたことないかも、よわってるどうぶつはみたことあるけど、あれは、もしかしたら、にんげんもつかれてるんやなくて、よわってるていうたほうがいいんか、よわってるけど、よわったままいきられる世界やから、それをつかれやていうたひとがいて、(後略)(あとがきp.129)

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