鳥たちの言葉

Works,ヴァースノベル,

『鳥たちの言葉』は、2024年に刊行された『改行-2024 autumn &winter(第二号)』に掲載していただいたヴァースノベルです。紙で読みたい方、その他のヴァースノベルに触れたい方はぜひ紙でご購入ください。

鳥たちの名前は、小学館の図鑑NEO『鳥』の索引を引用しています。また、アッタール『鳥の言葉』にオマージュを捧げています。

お楽しみください(PC推奨)。

 客人を迎えたのはいつぶりでしたでしょうか。かのひとは夜中、鳥たちの寝静まったころを見計らってやってきました。奇妙な外套に身を包み、夜の空気をめいいっぱい取り込みながらこちらへと歩を進める調子は羽のように軽く、とらえどころのない印象を覚えました。そしてバルコニーに椅子を二脚だし、水煙草を囲んだのです。二つのホースで一つの煙をわけあい、頂上に置かれた椰子の炭はちらちらと星空に呼応してまたたきました。客人は語り部でした。そうして、語り部は遠い昔のできごとについてこのような話を語りました。
 
 
アーケオプテリクス   ええ、そのころのことはよく覚えていますとも   ワライカワセミ
アオアシシギ   なにせわたくしは炭運びの任をひとりで請け負っていて   ワタリガラス
アオアズマヤドリ   かのひとに、炭とほんの少しの物語を運ぶのは   ワタリアホウドリ
アオカケス   当時のわたくしのもっとも楽しみとする仕事でしたからね   ワシミミズク
アオガラ   かのひとはとても美しい方でした、いつ行けど一人で水煙草を   ワシカモメ
アオカワラヒワ   ぷかぷかと蒸かしながら、どこか遠い目をし   ワカケホンセイインコ
アオゲラ   その視線はあちらこちらを彷徨いましたし、その先に   ロイヤルアホウドリ
アオサギ   目を向けましたら必ずそこに素晴らしい贈り物がありましたから   レンカク
アオショウビン   といいますのも、かのひとは煙の行く末を案じておられました   レア
アオツラカツオドリ   水煙草から煙をぼこぼこと吸いこみまして、そして   ルリビタキ
アオバズク   そっと吐くかのひとの横顔を今も覚えていますとも   ルリコンゴウインコ
アオバト   わたくしとかのひとの間をゆらゆらと行き交う煙たちはいずれ   ルリカケス
アオフウチョウ   薄くなってすっと虚空へ消えてしまう   ルリオーストラリアムシクイ
アオメニセタイヨウチョウ   ちょうどこんな夜でした、つまり   ルリイロオオハシモズ
アカアシカツオドリ   星々が静かにまたたいて仲間を呼びあって忙しい   リョコウバト
アカアシシギ   かのひとは煙を蒸かすお供として数多の物語を   リュウキュウヨシゴイ
アカアシミズナギドリ   そのつどわたくしに求めてまいりました   リュウキュウツバメ
アカエリカイツブリ   わたくしはむろんそれを楽しみにして   リュウキュウコノハズク
アカエリヒレアシシギ   毎日新鮮で愉快な物語を仕入れては   リュウキュウカラスバト
アカオタイヨウチョウ   かのひとに、夜ごと語り聞かせてまいりました   リスカッコウ
アカオネッタイチョウ   かのひとがより一層の興味を示しましたのが   ラケットヨタカ
アカガオネズミドリ   未だこの世界に存在することない   ライラックニシブッポウソウ
アカカザリフウチョウ   翼を持ち、空を自在に飛び回るものの物語でした   ライチョウ
アカガシラサギ   そのころには、飛ぶという概念はすでに知られておりました   ヨタカ
アカガシラソリハシセイタカシギ   しかしそれは神話のうえの出来事として   ヨシゴイ
アカゲラ   もちろんこの物語も、この時代からすれば充分に神話ですけれど   ヨシガモ
アカコッコ   ともかく飛ぶということは神と天使にのみ許された   ヨーロッパコマドリ
アカショウビン   形而上学的なもの、わたくしらには到底   ヨーロッパオオライチョウ
アカツクシガモ   感知することのできないあかるい予兆のようなものでしてね   ヨウム
アカノガンモドキ   いずれ天の星々に手を伸ばす存在が現れるのでないか   ユリカモメ
アカハシウシツツキ   そうした新しい空気がですね、街中に溢れていて   ユキホオジロ
アカハラ   今からすると考えられないほどに、おおらかな時代でした   ヤンバルクイナ
アカハラダカ   かのひとは煙に注目した、ただひとりの存在でした   ヤリハシハチドリ
アカヒゲ   かのひとは言いました「煙は翼を持たないがそれは目に見えない   ヤマドリ
アカミノフウチョウ   だけであって、おおらかな大気が煙たちを包み込んで   ヤマセミ
アカモズ   空へ空へと無限に飛翔させる力をお与えしている」のだと   ヤマショウビン
アキクサインコ   煙はいずれの日にか空の彼方へと解放されるであろう、と   ヤマシギ
アゴヒゲペンギン   当時の煙というものはいまと少しだけ様子が違っていて   ヤマゲラ
アジアへビウ   かのひとの煙は特別、わたくしは煙の街で暮らしていました   ヤマガラ
アジサシ   わたくしの知る煙は本来、大地に留まるものでありました   ヤブツカツクリ
アシナガウミツバメ   どのような魔法を使っているのか、かのひとの煙だけ   ヤブサメ
アデリーペンギン   宙へとすっと浮かび上がり、発散してしまうのでした   ヤツガシラ
アトリ   煙の街では濃厚な紫煙が地上に滞留し、街では常に視界を遮られ   ヤシオウム
アナドリ   みながみな、自分以外の誰かの存在を把握することに困難を   ヤイロチョウ
アナホリフクロウ   伴うような、ぶつかってもその直前までは気がつかない   モリバト
アネハヅル   ような、そうした有り様でしたから、煙というものは   モモイロペリカン
アビ   厄介者扱い、しかし誰もそれを取り除く方法を知ることはなく   モモイロインコ
アフリカオオノガン   みなみな煙の民として粛々と日々を持て余すのみでしてね   モズ
アフリカハサミアジサシ   しかしかのひとは煙を操ることができました   メンフクロウ
アフリカレンカク   かのひとは、水煙草の葉を自在に組み合わせて   メンガタハタオリ
アホウドリ   煙を使って、あらゆるものを模すことができましたから   メボソムシクイ
アマサギ   薄荷と柑橘を合わせた煙を吹いては飛び魚をつくりましたし   メダイチドリ
アマツバメ   樹と花の香のする煙は森を駆ける鹿となりました   メスアカクイナモドキ
アマミヤマシギ   かのひとはあるとき、街に煙が滞留するのをお聞きになって   メジロ
アミハラ   それはなぜなのか、語るよう、わたくしに尋ねたことがありました   メグロ
アメリカカイツブリ   この時代には、簡単にものとものとが   メガネコウライウグイス
アメリカシロヅル   くっついたり、離れたりを繰り返していたので   メガネケワタガモ
アメリカダチョウ   物語と現実だってその通りでありました、つまりは   ムラサキサギ
アメリカチョウゲンボウ   街の人々の暮らしはいつだって物語へと   ムネフサミツスイ
アメリカヒドリ   からめとられますし、逆もまた然りということで   ムネアカタヒバリ
アメリカヒレアシ   いつだって語る力によって暮らしが開かれて   ムネアカゴシキドリ
アメリカヤマセミ   きたのだということになります、ですから   ムナジロゴジュウカラ
アメリカレンカク   わたしがかのひとになぜかと問われたその時   ムナジロカワガラス
アメリカワシミミズク   紫煙と巨鳥の物語が、ひそやかに幕を開けたのです   ムナグロ
アリスイ   わたくしは、街に滞留するのは巨大な一羽の鳥です、と   ムシクイフィンチ
イーウィ   かのひとに宣言いたしました、そして巨鳥は、傷ついていました   ムクドリ
イイジマムシクイ   空に巨大な栓がしてあって、それゆえに飛び立つことが   ムギマキ
イカル   不可能になってしまった、巨大な鳥を浮かび上がらせるだけの力   ミユビシギ
イカルチドリ   それは空の栓を抜くことによってでしか得ることはできず   ミユビゲラ
イスカ   傷ついた紫色の巨鳥はそれで飛び上がることができずに街へ   ミヤマホオジロ
イソシギ   滞留し続け、栓が抜けるときを今か今かと待っているのです   ミヤマガラス
イソヒヨドリ   かのひとはその物語をたいへん気に入りました、そして   ミヤマオウム
イヌワシ   それでは空の栓を抜かねばなりませんね、と水煙草を蒸かして   ミヤコドリ
イワツバメ   それは林檎と柘榴の香料を混ぜた煙だったのですけれど   ミミカイツブリ
イワトビペンギン   それをひと吹き、ふた吹きするとたちまちふかふかの   ミフウズラ
イワドリ   煙がその場に留まり煉瓦のように固まっていくではありませんか   ミノバト
イワヒバリ   わたくしとかのひとは、その階段を空へ空へと吹き   ミナミベニハチクイ
インカアジサシ   一段、また一段、こっそりと登っていきました   ミナミシマフクロウ
インドアカガシラサギ   星も寝静まってしまったかのような暗い夜   ミドリイワサザイ
インドガン   銀色の月だけがわたくしたちを照らし、街はしんとして   ミツユビカモメ
インドクジャク   紫色の巨鳥は銀光に浴しながらそのなめらかな羽たちを   ミソサザイ
インドトキコウ   惜しげもなく艶やかに輝かせながら、今か今かとその時を   ミゾゴイ
ウグイス   待っている様子、わたくしたちは螺旋状に浮かべた煙の階段を登り   ミサゴ
ウコッケイ   まだ空がとても近くにあった時代でもありましたからついに   ミコアイサ
ウズラ   栓のありかを突き止めることができたのです、それから   マユグロアホウドリ
ウズラシギ   二人してうなずきあい、呼吸を合わせてから、すとんと一息   マメルリハ
ウソ   栓を抜いてしまったのでさあ大変、たちまち上昇気流が渦巻いて   マメハチドリ
ウチヤマセンニュウ   街へその巨躯を横たえた鳥をふわりと持ち上げ   マミチャジナイ
ウトウ   鳥は一声クエェと啼いたのち、栓の抜かれた穴のなかへと   マミジロタヒバリ
ウミアイサ   しゅるしゅると、吸いこまれていくではありませんか   マミジロアジサシ
ウミウ   紫煙燻る街はすっかり晴れきって、住民たちがそれに気がつくのは   マミジロ
ウミオウム   きっと夜明けがやってきたあとになりましょう、ともかく巨鳥は   マヒワ
ウミガラス   穴の中へと吸いこまれていったあと、しかしこちらの世界へと   マナヅル
ウミスズメ   戻ってきました、元の巨鳥の姿ではありませんでした   マダラウミスズメ
ウミネコ   それは、夥しい種類の鳥の群れだったのです!   マダガスカルチュウヒダカ
ウミバト   巨鳥はいまわたくしたちのよく知る鳥の形と   マダガスカルタイヨウチョウ
エジプトハゲワシ   全くとは言わずともほとんどが同じような形で   マゼランペンギン
エゾセンニュウ   この世界へと舞い戻り、各地へ散らばっていきました   マゼランガン
エゾビタキ   わたくしたちの煙の階段は、とうとう綻びそうになっていて   マクジャク
エゾムシクイ   それに気づいた二羽のコンドルが、わたくしたちを   マキノセンニュウ
エゾライチョウ   下まで送り届けてくれました、さて地上に戻ってみましたら   マガン
エトピリカ   数多くの鳥たちが、数多くの個性が、数多くの生き方が世の中に   マガモ
エトロフウミスズメ   溢れ、めいめいに栄え、この瞬間、世界に鳥が   ホンセイインコ
エナガ   一気に誕生したのです、わたくしたちは初めて、翼あるもの   ホンケワタガモ
エナンティオルニス   力強く羽撃き、自在に空を飛び回るものたちを   ホロホロチョウ
エピオルニス   認めることとなったのです、街の人はたいそう驚きました   ホトトギス
エボシガラ   目を覚ますと、街を覆っていたどんよりとした紫煙が消え   ボタンインコ
エボシドリ   見たこともない姿で、聞いたことのない囀りをする生物が   ホシムクドリ
エミュー   たいそう優雅に飛び回っていたのですから! しかし街の人は   ホシハジロ
エメラルドテリムク   すぐに、その新しい生物の誕生を祝うための準備を   ホシガラス
エリグロアジサシ   始め、パン職人は鳥の形を模したパンを   ホオミドリウロコインコ
エリマキシギ   ワイン職人は鳥たちの好きな果実を集めた酒を   ホオジロカンムリヅル
エリマキミツスイ   果物商は熟れに熟れた果実をふんだんに持ち寄って   ホオジロガモ
エリマキライチョウ   生誕祭は、いつまでも絶えることがありませんでした   ホオジロ
エンペラーペンギン   さて、そんななかわたくしとかのひとはどうしたか   ホーアチン
オウギタイランチョウ   わたくしはいつものように炭運び   ホオアカオナガゴシキドリ
オウギバト   かのひとは、力を使いすぎたのか住み処からでられなくなって   ホオアカ
オウギワシ   わたくしの仕事はかのひとに街の様子を日ごと伝えること   ホウロクシギ
オウサマペンギン   かのひとはそれをいつも楽しみにしてくださり   ベンガルハゲワシ
オオアカゲラ   よかったよかったと、微笑み煙を蒸かしては   ヘルメットオオハシモズ
オオアジサシ   その煙は天へとたなびいてやがて静かに消えていくのでした   ヘラシギ
オオウミガラス   かのひとは、煙でものを象る力を失ってしまったのですが   ヘラサギ
オオウロコフウチョウ   やがて鳥たちの間で、かのひとの噂が広がって   ヘビクイワシ
オオオナガショウビン   たちまち鳥じゅうの話題となりました、つまりは   ベニマシコ
オオガラパゴスフィンチ   鳥をつくりあげたのは、栓を開ける行為によって   ベニヒワ
オオカラモズ   つまりはかのひとが栓を開けなければ、鳥たちは   ベニハワイミツスイ
オオクイナ   それまで存在しなかったということなのですから、皆みな   ベニハチクイ
オオグンカンドリ   感謝を伝えようと、かのひとに面会を申し込むように   ベニスズメ
オオコノハズク   なったというわけでした、わたくしは鳥とかのひとの   ベニジュケイ
オオサイチョウ   仲介役をこなして、毎日かのひとに詰めかける   ベニコンゴウインコ
オオジシギ   色とりどりの鳥たちに挨拶して回るので手いっぱい   ベニイロフラミンゴ
オオジュリン   困ったことに、面会の順番をどのように決定するのかは   ベニアジサシ
オーストラリアガマグチヨタカ   わたくしに良い知恵が浮かばず   フンボルトペンギン
オーストラリアヅル   かわりにかのひとの蒸かす煙を小さな瓶に詰めては   ブンチョウ
オーストンウミツバメ   それを親愛の印として鳥たちに配り歩くことに   フルマカモメ
オオセグロカモメ   相成りました、しかし、やはり鳥たちはかのひとを   ブッポウソウ
オオセッカ   一目見てみたいのだと、どうしても譲りませんので   フサホロホロチョウ
オオソリハシシギ   しかたがなく、お気に入りの星を摘み取ってきた鳥から   フクロウ
オオタカ   かのひとに面会してもらうように、通達を出しました   フキナガシハチドリ
オオヅル   まずはじめに、ヤツガシラがやってきました、飾り羽根を   フィリピンワシ
オオトウゾクカモメ   ピンと立てて、胸を張ってかのひとの元へ参りました   ビンズイ
オオトラツグミ   立派な冠を見たかのひとは「まあなんと   ビロードマミヤイロチョウ
オオニワシドリ   美しい、そなたは後年鳥のまとめ役を引き受ける   ビロードキンクロ
オオハクチョウ   ことになるでしょうね」と言いました、ヤツガシラは   ヒレンジャク
オオハシウミガラス   たいへんに喜んで「なんと嬉しいお言葉か! 必ずや   ヒヨドリ
オオハシシギ   鳥たちをまとめて旅に出ましょうぞ、きっと鳥の王を探す   ヒヨクドリ
オオハシマダガスカルモズ   遠い旅路になるでしょう」と囀って   ヒメクロウミツバメ
オオハチドリ   神を讃えながらかのひとの元をあとにしました、さて次に   ヒメクイナ
オオハム   やってきたのはサヨナキドリでした、かのひとはその愛らしい姿  ヒメウズラ
オオバン   そして千変万化の鳴き声にうっとりとして言いました「嗚呼そなた   ヒメウ
オオフウチョウ   そなたの鳴き声は千の夜に響くでしょう、夜ごとに   ヒメアマツバメ
オオブッポウソウ   人も、鳥もそなたの声にさぞ酔いしれるでしょう」と   ヒバリシギ
オオフラミンゴ   サヨナキドリはたいそう喜んで「わたくしの歌声は野を越え   ヒバリ
オオフルマカモメ   海を越え、あなたの元へ響きましょう」と応えました   ヒドリガモ
オオホウカンチョウ   次にやってきたのはオウムです、美しい衣を身に纏い   ヒシクイ
オオマシコ   その姿の鮮やかさといったら、かのひとは「まあ麗しい御姿よ   ヒゲワシ
オオマダラキーウィ   きっとそなたはこの世のあらゆる衣装を着こなす   ヒゲペンギン
オオミズナギドリ   唯一のとり」と言いました、オウムはわさわさと身体を   ヒゲドリ
オオミチバシリ   揺らして「ああなんと嬉しいことでしょう、必ずこの世の   ヒゲガラ
オオムシクイ   衣装をあますことなく着こなしてみせましょうぞ」と歌って   ヒクイナ
オオメダイチドリ   お次に飛んできたのはクジャクです、クジャクは凛と   ヒクイドリ
オオモズ   かのひとの元にひざまずきましたので、かのひとは「まあそなたの   ヒガラ
オオヤマセミ   羽根を広げれば、どこで誰が道に惑いましょうか」と歌うように   バン
オオヨシキリ   言いました、クジャクは恭しくお辞儀して「ああ勿体なき   ハワイガン
オオヨシゴイ   お言葉、必ず誰かの道を照らして歩きましょう」と   ハリオアマツバメ
オオルリ   すっくと立ち上がりお辞儀をしました、さて次にやってきたのは   ハヤブサ
オオワシ   アヒルでした、アヒルは継ぎ目のない、純白の身体を振り振りし   ハマシギ
オガサワラミズナギドリ   かのひとの前へ躍りでました「清らかな   ハバシニワシドリ
オカメインコ   水の使者よ、そなたはきっと見るものすべてに清廉さを与え   ハチクマ
オカヨシガモ   全ての汚濁を洗い流してしまうでしょう」と   ハジロクロハラアジサシ
オガワコマドリ   かのひとの言葉にアヒルは身震いして「光栄です   ハジロカイツブリ
オキナインコ   きっと、水の世界でわたしたちは潔白に栄え   ハシボソンミズナギドリ
オグロシギ   見るもの全ての心を洗いましょう」と言い   ハシボソガラパゴスフィンチ
オシドリ   アヒルと入れ違いになって、ヤマウズラがやってきました   ハシボソガラス
オジロトウネン   かのひとは「そなたは、必ずや秘されたものの前に   ハシブトガラス
オジロビタキ   辿り着くことのできる立派な脚をお持ちです」と語り   ハシブトガラス
オジロワシ   ヤマウズラは嬉々として足踏みをし「そうともわたくしは   ハシビロコウ
オナガ   必ず美しい宝石を手に入れるでしょう」と丁重に羽根を広げて   ハシビロガモ
オナガイヌワシ   お次はホマーがやってきてかのひとは「影の鳥よ   ハシジロキツツキ
オナガガモ   その影こそが皆に吉兆を告げ、魂を救済するでしょう」と   ハシグロアビ
オナガサイホウチョウ   物珍しそうに言うので、ホマーは誇らしげに   ハゴロモガラス
オナガセアオマイコドリ   「光栄です、影から出で、影に帰りましょう」   ハクトウワシ
オナガフクロウ   必ずや吉兆の徴に姿を顕しましょうと約束し意気揚々   ハクセキレイ
オナガミズナギドリ   お次にやってきたタカとすれちがいお辞儀をしました   ハクガン
オニオオハシ   かのひとはタカを見るや否や「まあ誇りのとりよ! 何せ   ハギマシコ
オバシギ   神は王のためにそなたを創られた!」と讃えるのでタカは喜んで   ハイタカ
オロロン鳥   「ええわたしはきっとその運命に恥じず生きます」   ハイイロミズナギドリ
オンジュンペンギン   潔い返事をしました、タカは胸を張って   ハイイロヒレアシシギ
カイツブリ   悠々と退場します、お次に現れたのはアオサギでした   ハイイロチュウヒ
カオジロガン   かのひとは「まあアオサギさん、そなたは遠きを   ハイイロタチヨタカ
カオジロゴジュウカラ   見渡すもの、必ずやその眼が世界の運命を担い   ハイイロガン
カカポ   そなたの見渡す世がこの世となりましょう」と慄くので   ハイイロウミツバメ
カグー   アオサギは背筋を正して「身に余るお言葉、きっとこの眼で世界を   ノビタキ
カケス   正しく見つめることを誓いましょう」と大翼をばさり広げました   ノバリケン
カササギ   フクロウがやってきたので、かのひとは「まあ夜の王   ノドグロミツオシエ
カササギガン   そなたは世界の半分を見守るおかた、この世界に   ノドグロキハタオリ
カザリオウチュウ   なくてはならない役目を負った」と讃え、フクロウは照れ   ノスリ
カザリキヌバネドリ   「こころを洗い、清廉な身で夜の番を引き受けましょう」   ノジコ
カシラダカ   嘴を鳴らし得意げな様子、さてゴシキヒワが陽気に登場しまして   ノゴマ
ガチョウ   「ああ美しいゴシキヒワさん、そなたは信仰の光、この世界の」   ノグチゲラ
カツオドリ   ゴシキヒワは襟元を正して囀りました「このわたくしめが必ず   ネコドリ
カッコウ   ひとびとの救世主となりましょう」華麗に一回転して去り  ニュウナイスズメ
カッショクウオミミズク   そうしてかのひとの元へ絶えず様々   ニュージーランドバト
カッショクペリカン   西からも東からも数多のとりたちが押し寄せて   ニシマキバドリ
カナダヅル   そのたびにかのひとはかのとりたちに神話を授けていきました   ニジキジ
カナリア   繰り返しますがおおらかな時代だったのであります   ニシイワトビペンギン
ガビチョウ   その神話はたちまち真となり、鳥たちを形象していきました   ニオイガモ
カベバシリ   鳥は鳥たちで、人間たちの話をしました、かれらは   ナンヨウショウビン
カヤクグリ   人間というのは鳥と同じくらい歌と踊りが大好きなのだと   ナンキンオシ
カラアカハラ   ある年ごろの人間は一瞬の神秘を隠し   ナンキョクオオトウゾクカモメ
カラカラ   ある人間は目の前のことしか見ないと思いきや千里先をも見通し   ナベヅル
カラシラサギ   ある人間はまた、語りの形によってみるみる姿を変えていく   ナベコウ
カラスバト   そうした噂がたったものですから、人間はそのようになり   ナベクロヅル
ガラパゴスコバネウ   現在もこうして、その形質を受け継いだという   ナキハクチョウ
ガラパゴスフィンチ   そんなわけでございます、さて、かのひとの   ドングリキツツキ
カラフトアオアシシギ   話に戻りましょうか、かのひとは、日々鳥たちの   トラフズク
カラフトフクロウ   言葉を聞いては煙を蒸かす毎日を送っておりましたが   トラツグミ
カラフトライチョウ   ある日忽然と、完全に姿を消してしまわれたのです   トモエガモ
カリガネ   わたくしにも告げず、どこかへふと消えてしまいました、わたくしは   トビ
カルガモ   大層悲しく思いましたがしかしかのひとの身に何かよくないことが   ドバト
カロライナインコ   起こったのだとは不思議と全く感じませんでした   トサカレンカク
カワアイサ  わたくしは、旅に出ることにいたしました、目的はそうです   トキハシゲリ
カワウ   鳥たちの物語を余さず蒐集することに他なりませんでした   トキイロコンドル
カワガラス   かのひとはきっと、鳥の王なのでしょう、ええわたくしは胸を張り   トキ
カワセミ   そう言い切ることができます、かのひとこそが、空の栓を抜いて   ドードー
カワラバト   鳥たちを広く誕生させた、まさにそのひとなのですから   ドウバネインコ
カワラヒワ   やがてかのひとがいなくなったことで鳥と人との蜜月は失われ   トウネン
カンザシフウチョウ   次第に互いは交じり合わなくなっていきました   トウゾクカモメ
カンムリアマツバメ   それは鳥にとっても人間にとっても不幸なこと   テンニンチョウ
カンムリウミスズメ   とはいえ、避けては通れない道でもあったのです   ディアトリマ
カンムリカイツブリ   鳥たちはやがて現在において知られる姿へと変化し   ツルモドキ
カンムリカラカラ   人もまた緩やかな変化の道筋を辿りながら、おおらかな   ツルシギ
カンムリサケビドリ   時代は終わりを告げ、そして、神話は忘れ去られて   ツルクイナ
カンムリシギダチョウ   久しくなりました、しかし鳥たちはいずれ旅立つ   ツリスガラ
カンムリツクシガモ   必ず旅立つでしょう、なぜって? かのひとを探す   ツメバケイ
カンムリニワシドリ   そのためですよ、かのひと、鳥の王を求める   ツメナガセキレイ
カンムリワシ   果てしない旅路が鳥たちの前に開けているのです、そしてこれが   ツミ
キアシシギ   わたくしの蒐集した神話のなかでもとびきりのものですが   ツバメチドリ
ギアナイワドリ   鳥たちはいずれ、彼ら自身が、彼ら自身の求めた王であると   ツバメ
キーウィ   気がつく日がやってくるのです、そうです、鳥たちは旅立って   ツノメドリ
キイロアメリカムシクイ   水面に映る彼らの姿こそ鳥の王そのものであると   ツツドリ
キクイタダキ   知るのです、ああわたくしはその時が来るのが待ちきれません   ツグミ
キジ   かのひとはきっと煙になったのです、この世界を取り巻く大気です   ツクシガモ
キジオライチョウ   大気そのもの、アトモスフィア、わかりますか   ツキノワテリムク
キジバト   鳥たちを支え宙へ浮き上がらせる力そのもの、そして鳥たちを   ツカツクリ
キセキレイ   しっかりとつつんでやって安心を与える空気そのものに   チョウゲンボウ
キタイワトビペンギン   かのひとの息吹が感じられましょう、ああいつでも   チュウヒ
キツツキフィンチ   こうして会えるのです、わたくしはかのひとが   チュウシャクシギ
キバシオオライチョウ   姿を消して、炭運びの任から解放されたあとも常に  チュウサギ
キバタン   その気配を感じ取っておりました、だから決して寂しくは   チャバラサケイ
キビタイボウシインコ   なかったのです、ああもうこんな時間だ   チャカザリハチドリ
キビタキ   見てください、星々が空に吸いこまれてゆく、やがて   チャイロニワシドリ
キュウカンチョウ   太陽が昇るでしょう、こうした物語は深夜にこそ   チシマウガラス
キョウジョウシギ   相応しい、それにしてもあなたは素晴らしい聴き手です   チゴモズ
キョクアジサシ   久々にこんなに長く話し込んでしまった、いつぶりか   チゴハヤブサ
キリアイ   さて水煙草をくださいな、ああ乾いた喉には乾いた煙が似合う   タンチョウ
キルディア   さて、お次はあなたのお話を聞かせてくださいな、あなたは   ダルマワシ
キレンジャク   どうしてこのような場所に? 昼と夜を分かつような絶対の   タマシギ
キンカチョウ   境目に、ひとりで住んでいるのでしょうか? 夜は短いです   タヒバリ
キンクロハジロ   空が白むとわたくしは次の場所へ旅立たなくてはならない   ダチョウ
キンケイ   急かすようで申し訳ない、しかしどうか、わけを教えてくれないか   タシギ
ギンザンマシコ   わたしは、このような素晴らしい話を聞いたお礼に、かれに   タゲリ
キンバト   なにかを語りたくなった、しかしわたしはどうしてここへいるのか   タカへ
キンメフクロウ   わたしにもわからないのだった、ごっそりと記憶が抜け   タカブシギ
クイナ   記憶を探ってゆけば、たちまち煙が身体に纏わりついては離れない   ダイゼン
クサシギ   煙? わたしは水煙草を蒸かす者であるとは言えないか?   ダイシャクシギ
クサムラツカツクリ   わたしの手元にはいつも水煙草があった、そして常に   ダイサギ
クビナガカイツブリ   それを蒸かしていたものだ、いやもしや   ソリハシセイタカシギ
クビワツグミ   もしかしてわたしがかのひとなのであろうか? まさか   ソリハシシギ
クマゲラ   かれにわたしの考えていることをそっくりそのまま伝えると   ソデグロヅル
クマタカ   かれは温かく微笑んだ、ようやく会えましたねと、長かった   ソウシチョウ
クラハシコウ   やがて、空には柔らかい光が差しはじめ、草原は   ソウゲンライチョウ
クリセタイヨウチョウ   銀色に輝いて、ゆらゆらと揺れるのでした   センダイムシクイ
クルマサカオウム   ああ会いたかったですかのひとよ、いままでどこに雲隠れ   セッカ
クロアシアホウドリ   やがて、ここへは大群が、鳥たちの群れが   セグロミズナギドリ
クロアジサシ   瞬く間にやってきて草原中を色とりどりに埋め尽くし   セグロセキレイ
クロウミツバメ   あなたを見つけては大騒ぎ、あなたは紫色の巨きな鳥   セグロカモメ
クロカミインコ   この世界は空の栓の先ということか、ああわたくし   セグロカッコウ
クロガモ   こちらがわへ来てしまいました、空の栓が開いていたので   セグロアジサシ
クロコサギ   ふらっと、こちらへ吸いこまれてしまったのでしょうか   セキセイインコ
クロコシジロウミツバメ   昔と違っていまはこんなに空も遠いのに   セキショクヤケイ
クロサギ   あなたはやはり空の向こう側へと渡っていたのですね、と   セイロンヤケイ
クロジ   語り手が言うのでその瞳を見つめるとようやく昔の面影と重なって   セイラン
クロツグミ   ああ、わたしをさぞ立派な物語にしてくれて   セイシェルサンコウチョウ
クロツラヘラサギ   こうしてここにいるのはあなたのおかげなのでしょうねと   スズメ
クロヅル   わたしはようやく目の覚める思いがして、思えば常に夜が明けず   スズガモ
クロトキ   かと思えば永遠の昼の中にいるような心地、これはつまり   ズグロモリモズ
クロハラアジサシ   ここが夢であり現であり、どこでもあってしかし   ズグロミゾゴイ
クロライチョウ   どこでもない場所であるということの証左であり   ズグロトサカゲリ
ケアシノスリ   こうした場所を人々は何と呼ぶのでしょうかと   ズグロシロハラインコ
ケイマフリ   あなたに問うと、いまは余白と言うのですと答えがあって   ズグロカモメ
ケープシロカツオドリ   なるほどわたしはいま河となって流れている   ズアカミツスイ
ケープペンギン   文字が生まれたことで、流れながらにして固着する   ズアカアオバト
ケツァール   そうしたことができるようになったのだと、初めてその時   ズアオアトリ
ケリ   気づいたのでした、そう、それではあなたは、ずっと鳥の神話を   シロフクロウ
コアオアシシギ   こうして伝えてきたのですね、わたしは泣き   シロハラミズナギドリ
コアカゲラ   あなたは笑った、こうして夜が明けていくのだ   シロハラトウゾクカモメ
コアジサシ   さあこれからまた、鳥たちに生きた神話を伝えなければ   シロハラクイナ
コアホウドリ   実はとっておきの神話は、今では文字となっていて   シロハラウミワシ
コイカル   それは名前なのです、あなたは鳥たちに面会するときに、自ずと   シロハラ
ゴイサギ   かのとりたちに名前を授けていたのです、はじめそれは宙に   シロハヤブサ
コウテイペンギン   浮かんでいて、ふわふわと、まさに煙のように頼りない   シロトキ
コウノトリ   そんなものだったのが、人が文字を発明して、鳥たちの名が   シロチドリ
コウミスズメ   形となり残されたとき、そのときもう一度神話が   シロクロサイチョウ
コウヨウチョウ   鳥の神話が始まったのです、厳かにあなたは言いました   シロカモメ
コウライアイサ   ですから、名前を呼んでやればよいのです、そして   シロカツオドリ
コウライウグイス   鳥のことを心に思うこと、さすれば鳥たちは必ず   シロガシラトビ
コウライキジ   あなたに応えてくれましょう、あなたが始め、わたくしが   シロガシラ
コウラウン   その後を引き受け、そして人がやがて名を呼び   シロエリハサミアジサシ
コウロコフウチョウ   そうして鳥の神話は連綿と続いてきたのです   シロエリオオハム
コオバシギ   わたしは大層感激し、ひとしきり歓声をあげ、水煙草を   シロアホウドリ
コオリガモ   ふぅと吹きました、煙はやがて鳥の群れの形になり   シラヒゲウミスズメ
コガタペンギン   草原をふんわりと駆け抜けていきました、次はあなたも   シラコバト
コガネゲラ   水煙草を蒸かしました、すると鳥の雛たちが煙のうえに   シラガホオジロ
コガネメキシコインコ   ぼんやりと顕れました、その雛たちは   シラオネッタイチョウ
コガモ   祝福の歌を囀って、たちまちあたりは好ましく騒がしい状態に   ジョウビタキ
コガラ   これからどうしましょうとあなたが呟きました、どうやら   ショウドウツバメ
コキンチョウ   ここがわたくしの旅の終着点のようですし、と少し   ショウジョウトキ
コクガン   少しだけ寂しげに、わたしの顔を覗き込んで   ショウジョウコウカンチョウ
コクチョウ   しかしわたしはとても嬉しく思いました、ぜひとも   ショウジョウインコ
コクマルガラス   ぜひともこれまでに蒐集した物語を、鳥たちの神話を   シュバシコウ
コゲラ   お聞かせねがいませんか、そう言うと草原を一陣の風がさっと   ジュウシマツ
コサギ   吹き抜けていきました、わたしは思わず眼を細めます、ぜひとも   ジュウイチ
コザクラインコ   あなたが胸を張って応えました、これからふたり   ジャワアナツバメ
コサメビタキ   ここで鳥の神話を話しましょう、あのとき、炭運びをして  ジャノメドリ
コシアカツバメ   あなたに夜ごと、物語を語り聞かせたように   シャカイハタオリドリ
ゴシキセイガイインコ   どこへいても、わたくしのやることは同じ   ジャイアントモア
ゴシキヒワ   伝えることこそがわたくしの使命なのですから、ああなんと眩しい   シメ
コシグロペリカン   わたしはこれから少しずつ、昔の記憶を取り戻して   シマフクロウ
コシジロウミツバメ   とおい昔の思い出も話せるようになるのでしょうか   シマノジコ
ゴジュウカラ   そうであればと願ってはやみません、そしてわたしが   シマセンニュウ
コジュケイ   かつてかのひとであったような、そうした荘厳な日々たちを   シマクイナ
コジュリン   取り戻して、再び鳥たちに面会する、そのような日が必ず   シマキンバラ
コチドリ   あなたは少し困った顔をしました、いいやここへやってくるのは   シマアジ
コチョウゲンボウ   きっと役目を終えた存在たち、忘れられた訳ではない   シマアオジ
コトドリ   しかし、立派に役割を果たした存在たちでしょうね、と   シベリアジュリン
コノハズク   それはつまり、かのとりらが、ここへやってきたときは   ジブッポウソウ
コハクチョウ   つまりそういうことなのですと、いずれ鳥たちが   シノルニトサウルス
コバタン   大勢の鳥たちがここへやってくるのでしょうか、あなたはふと   シノリガモ
コフウチョウ   視線を落としてから、しかしとわたしを見つめました   シチメンチョウ
コブハクチョウ   それは決して悲しいことではなくそうあってはならない   シソチョウ
コホオアカ   だからわたくしたちにできることは、ただ一つでした   シジュウカラガン
コマツグミ   鳥の神話を伝えること、鳥の神話を常に伝えつづけること   シジュウカラ
コマドリ   わたしたちはこうして、文字として人々の前に顕れては消え   サカツラガン
コミミズク   消えては顕れてを繰り返し、鳥の神話を伝えていく、そして   サイチョウ
コムクドリ   人々が鳥の神話を、鳥たちをまもっていけるよう、鳥と人間の   コンドル
コモロルリバト   蜜月を思い出すこと、それを助けるのがわたしたち   コンゴウインコ
コヨシキリ   きっと、そこにいるあなたにも、これが届いていることでしょう   コルリ

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