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WorksCALLmagazine,小説

「oh, aa, hidoi……hayaku kurumahe」
 大きいものの気配があった。それまで森は静まり返っていて、ハウス、そう、大きいものからハウスと呼ばれていたもの、わたし、intoハウス、していて、頭をゆっくりと掻く。脚を見ると灰色でゴツゴツ、ひまわりの種の殻を剥くのにぴったりで、うっとりする、いや、そうじゃなくて、大きいもの。いつもと違う大きいものが来て、outsideハウス、カチャリと出るときの合図が鳴って、でもいつものように飛んではいかなかった。森が、あまりにも静かだったから。警戒した。いつからだろう、あるときわたしたちがたくさんあつまっても出せないほどの大きな音がして、それから大地が唸った、初めて聞いた禍々しい音、大きいものは走り回っていなくなった、それからずっと静かになった。まず、ごはんの時間がなくなった、水が減る、おやつがない、大きいものが来ない、しかたがないので木を削って遊ぶ、来ない、気が散る、落ち着かない、毛を抜いた。
 大きいもの、どこに行っていたの、
「mou daijyoubu」
 ハウスはここだよ、外へ行くの、
「samukattane」
 小さいハウスだ、狭いけどひまわりの種! 水もある! 脚を出す、種を横に倒してくちばしでパキッとして、これこれ、しばらくなかった、お腹が空いていた、喉が乾いていた、寒かった、怖かった、
「pi-chan」
『pi-chan』
 大きいものがよく発する言葉。pi-chanと呼ばれたらpi-chanと返している、そうすると大きいものが喜ぶ、大きいものが喜ぶと嬉しい、たまに頭を撫でさせる、うまい大きいものと、へたなのとがいる、目の前の大きいものは、哀しそうな目をしている、頭をななめに突き出すと、大きいもののくちばし?が伸びてきて、撫でてくれる、なかなかうまい、つい喉が鳴った。
「shibaraku ha keihou naihazu」
 大きいハウスが遠ざかっていく、中くらいハウスに詰められて並ぶ小さいハウス、他にもいた、小さいもの、わたしと似ているものたち、next toハウス、小さいものが言った。
〈pi-chan〉
 大きいものが返した。
「pi-chan」
『pi-chan』
 わたしも返した。
【pi-chan】
 across fromハウス、にいた小さいものも返した。なんだ、みんなpi-chanを知っているのか、これのほかに、わたしは『halo-』も知っている、『kawaii』もよく使う、大きいものはわたしによく「kawaii」と言う。
「mada ikiteite yokatta, watashitachi machigattete gomen, sensou ni makikonde gomen, atarashii ouchi ikukarane」
 大きいものはたまに難しいことを言う。あれ、
 大きいもの、泣いてるの、
 どうして、泣いているの、
 よくわからないけど、大丈夫だよと伝えたかったから、そこはみんな同じだった、で、被った、

『【〈pi-chan〉】』