石牟礼道子『はにかみの国』感想
石牟礼道子『はにかみの国 石牟礼道子全詩集』(石風社)

読み始め:2023/8/16 読み終わり:2023/8/16
あらすじ・概要石牟礼作品の底流に響く神話的世界が、詩という蒸留器で清冽に結露する。1950年代作品から近作までの三十数篇を収録。石牟礼道子第一詩集にして全詩集。*芸術選奨文部科学大臣賞受賞。
読んだきっかけ
石牟礼道子の詩に興味があった。
コメント・感想
死んだ子供や妊娠、身体の欠損なんかは簡単に詩のテーマになりやすくてよくないな。詩が書きやすいからそれらのモチーフが使われているのか、何か切実な要請を以て使われているのか、上手く判断できる読書量がまだ足りないと思う。石牟礼道子の場合は後者だと思いたいが、不思議とそうした詩のときに私の胸に迫ってくるものはない。これは単に信仰の違いかもしれない。タイミングの問題なのかもしれない。しかし、俳句か詩かでいうと詩のほうが好みだった。特に「緑亜紀の蝶」はとてもよかった。(これは予想だが、二元論的宇宙の合一を描いているように見える点があまり受け付けられないのかもしれない。地元の言葉にアレルギーを起こしているだけかもしれない。色々理由はあるだろうが自分が予想していたほどは好きになれなかった)
良かった文・シーン
・緑亜紀
標高 九三六四米
渦巻く マリン・スノーの底
目ざす故郷は
青蛾山脈
(「原初よりことば知らざりき」)
・蛙のあしをひき裂くように
じぶんの愛をひき裂いてしまったので
もうなんにも生まれ替わることはできません
垂れ下がってしまった片割れの方の魂で
空が透きとおる昏れ方に
ひくひく ないていました
(「涅槃」)
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