石牟礼道子『石牟礼道子全句集』感想
石牟礼道子『石牟礼道子全句集 泣きなが原』(藤原書店)
https://www.fujiwara-shoten-store.jp/SHOP/9784865780260.html
読み始め:2023/8/15 読み終わり:2023/8/15
あらすじ・概要これまで人間が長年かけてつくりあげてきた文明は、結局、金儲けのための文明でしかないようです。……それをふり捨てて、もっと人間らしい、人間の魂の絆を大切にする倫理を立て直さなければ、いまの文明の勢いを止めることはできません。……とくに詩人や文学者に責任があると思います。この物質至上主義の世の中で、おめおめと自分の名声を保つために文学をやるのではなく、もっと人間のために、ひとりの人間の気持ちに立ち返らなければなりません。
読んだきっかけ
髙山花子『鳥の歌、テクストの森』で石牟礼道子が取り上げられていて興味を持った。図書館で借りた。
コメント・感想
馴染みがないリズムで不思議な感覚だった。霧の深い葦原に迷い込んだようになって、気づいたら読み終えていた。それにしてもこの人と私は本当に同じ世界に住んでいたのだろうかと疑いたくなる。こんなに黄泉の国に近づきながら生きていける人がいるのかと不思議でならない。ぱらぱらと読んでいて、時折おっと目を引く句がある。いくつか抜き出してみた。ここでは抜き出していないけれど、「毒死列島」というのもすごい言葉だなと思う。どちらかというと私は「劣化ウラン」の方の句に惹かれたけど、毒死列島はやっぱり言葉としてのインパクトがものすごく強い。また、未発表の句が創作ノートからいくつか書き出されていたけど(そんなことしてええんか……と思うけどありがたくはある)、書き直された痕跡というか、この句があの句の元になっているのかとわかる句がいくつかあって、そうした創作のプロセスを目の当たりにできたのも個人的には興味深かった。←死後勝手に? と思って調べたけど、この句集が刊行された時点でまだご存命だった。胆力がある。
良かった句
・にんげんはもういやふくろうと居る(「天」)
・樹液のぼる空の洞より蛇の虹(「天」)
・人間になりそこね 神も朝帰る(「天」)
・さくらさくらわが不知火はひかり凪(「天」)
・ダムの底の川盲いいてとろとろと(「水村紀行」)
・盲杖 媼がひとり花ふぶき(「水村紀行」)
・わが湖の破魔鏡爆裂す劣化ウランとか(「水村紀行」)
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