髙山花子『鳥の歌、テクストの森』感想

DiaryC0095,書籍感想

髙山花子『鳥の歌、テクストの森』(春秋社)

https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393441695.html

読み始め:2023/7/30  読み終わり:2023/7/30

あらすじ・概要
ときに空を舞い、ときに歌をうたい、ときに色彩ゆたかな羽を纏う鳥。世界中のありとあらゆる土地に生息するこの夥しい種類の鳥たちは、その起源や進化の謎、多彩な形態、さえずりの美しさから、はるかむかしから現在に至るまで、ひとびとの心を惹きつけ、古今東西のさまざまなテクストに、その姿が描かれ、記録されてきた動物であると言えるだろう。本書は鳥の歌や声がどのように作家によって聞かれ、音楽家によって追求されてきたのか、いくつかのテーマにもとづいて、テクストの森の中で鳥の声に耳を澄ますように紐解く。

読んだきっかけ
書店でたまたま見かけた。安定の春秋社(鳥にまつわる本が多いので、鳥好きの編集者がいると睨んでいる)だったので即買いした。

コメント・感想
 面白かった。取り上げられている本や音楽を一個も見たことor聴いたことがなかったので、最初はこのまま読んで大丈夫かなと思ったが、結果的にそれで良かった気がする。いざ「鳥にまつわる作品」を探そうとするとなかなか難航していたので、そうしたものが読みたい私のような人間にとっては良きブックガイドにもなった。石牟礼道子が特に気になった。鳥に対しての考え方が近いと感じる。また、武満徹にまつわる評論(特に武満徹とジャズとの距離感にまつわる考察部分)が面白くて、いまこの記事は『鳥は星形の庭に降りる』を聴きながら書いている。
 本論考は、タイトルにもあるように、鳥の「声」に特に着目して議論が進んでいく。今まで自分はあまり聴覚で鳥に触れてこなかったと感じた。確かに雀やキジバト、カラスの声を聞くことはあるが、石牟礼道子や泉鏡花の時代とは変わって、身近に鳥の鳴き声を感じることが少なくなった(または見かける野鳥が固定された)。しかしそれでも鳥たちはどこかで今も鳴いている。石牟礼道子や泉鏡花のイマジネーションを、今この時代で受け継ぐならどのような仕方が可能なのか考えたい。
 そういえば、『君たちはどう生きるか』に登場したアオサギも鳥の声で鳴くことはなかったと記憶している。他の鳥の声は割と登場した記憶がある。だからなんだという感じだが、一応メモしておく。