柴田元幸・高橋源一郎『柴田さんと高橋さんの小説の読み方、書き方、訳し方』感想
柴田元幸・高橋源一郎『柴田さんと高橋さんの小説の読み方、書き方、訳し方』(河出書房新社)

https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309019178/
読み始め:2023/4/3 読み終わり:2023/4/3
あらすじ・概要小説は、“読む”だけではもったいない。書いて、訳して、また読んでみたら、あなたも小説を100倍楽しめます……日本を代表する作家と翻訳者が贈る、初の“三位一体”小説入門!
読んだきっかけ
図書館で見つけたから。
コメント・感想
小説について何もわからないということを確認するために何度もこうした本を読んでいる気がする。
ブックガイド(日本文学、海外文学で30冊プラスαずつおすすめしたい本が取り上げられており、お得)としても読むことが可能。
わかりを得たい。いや、わからないほうがいいのかもしれないが。難しいね。やっぱり、圧倒的に読んでいる量が足りないなと思ったし、むしろ今は書くよりたくさん読んだほうがいいんじゃないかと思った。
良かった文・シーン
・高橋「小説で書くことがない、というのは作家が言わない本当のことの一つ、というか、もっとも大きな一つです。「あいつの作品は本当はつまらないんだけれども、みんなが褒めているからいいか」とか、作家が言わないことはたくさんある。本当のことを言うのが文学だというのは、実はまったくの嘘なんですね。でも、よく考えてみたら、これは文学に限ったことではなくて、この世界の構造は基本的に「本当のことは言わない」ということなのかもしれない。つまり「コード」というのは、そういうことですよね。」(p.27)
ここの文章を読んで、先輩に「小説で書きたいこととかなくないですか?」と聞いたら中原昌也をおすすめされたことを思い出した。まだ一冊も読んでいないが。
・高橋「そう読んでもらえると幸いですが、でもどっちでもいいんです。だって、小説の素晴らしいところは、そこに書かれていることが嘘かもしれないということですからね。あるいは本当なのかもしれない。つまり、一種の手品なんです。だから、小説家は種明かしをしてはいけない。コードというのは「こういう展開ですけれども、本当のテーマはこれですよ」という種明かしをするための種なんですね。そして、いま、小説は、種明かしとセットで売られていると思います。」(p.33)
・小説より面白いものは この世に存在しない(p.47 小見出し)
・高橋「今まで詰まっていた回路がパカッと開いて気が通ることを「チャクラが開く」って言うけど、あの感じってよくわかるんですよ。(中略)わかるって、もう説明がつかないんですよ。その時に初めて自分の中で面白いと思うようになった。ある日チャクラが開いて腑に落ちた。小説を書くことについてもそうで、ずっと書かない時期があって、八年ぶりに小説五百枚くらいを真剣に書いたけど、あまりにつまらない(笑)。「正気かよ」と思って次に二つ目を書いて、三つ目に『ジョン・レノン対火星人』になる小説を書いているうちに、突然「あ、そうか、書くっていうのはこうすればいいんだ」って、これもいきなり腑に落ちた。あることに対して接線を引いていたら、ずっと続けているうちに、溶液の濃度が濃くなるみたいに凝縮していって、ある瞬間突然飽和すると、そのとき穴が開く(笑)。おそらく人間の脳というのはそういう認識でないと納得しないんじゃないかって思うんです。何かができないって自分の中で禁じてるのも、たぶんそれはチャクラが開いてないだけで、それがある日突然開くかもしれない。」(p.214-215)
一昨年くらいにひたすら線のことばかり考えていたなということを唐突に思い出した。
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