【ネタバレあり】映画『天地明察』感想・プロット整理
『天地明察』(2012)・141分

観た日付:2023/2/25
どこで観た:アマゾンプライム
あらすじ将軍に囲碁を教える名家の息子として生まれたものの、出世も富にも興味がないまっすぐで不器用な男、安井算哲。星の観測と算術の設問を解いている時が一番幸せで、好きなことに熱中しているときは周りがみえなくなってしまう。仕事である囲碁に疑問を感じ、いつも真剣勝負の場に身を置いていたいと願う熱い思いを心にひめていた。将軍の後見人である会津藩主・保科正之はそんな算哲を見込み、800年にわたって使われていた暦の誤りを正し、新しい暦を作る大計画のリーダーに抜擢する。これには大きな難関がふたつ待ち受けていた。ひとつは、日本全国で緻密な天文観測を実施すること。ふたつめは、古来の暦を重んじている朝廷に新しい暦を認めさせること。数々の挫折にも負けず、持ち前の誠実さとひたむきさで果敢に立ち向かっていく算哲。頼もしい師や友人、そして愛する人に支えられ、決してあきらめない男・算哲と皆の夢をかけた、果しなき挑戦がはじまる。
(アマゾンプライムから引用)
観たきっかけ
小説を読んだので、映画にするにあたりどのように脚本に手を入れたのか知りたくなった。
コメント
面白かった。私は原作とどこが違うのかという視点で見ていたが、純粋に見ても楽しめたと思う。水準の高い邦画。監督は『おくりびと』を手掛けた滝田洋二郎。五百ページ超えの大作を141分に収めるためにかなり脚本に工夫がなされていて、勉強になった。闇斎が死ぬのはさすがに笑ったけど。日本映画のお約束ですね、というシーンがとにかく多い。
小説と比べると、「見せる映像」を要所要所で入れなければならないのだなという点に気付かされる。とにかく派手な音・映像・演出で盛り上げなきゃいけないから出来事を盛る必要があるのだと思う。文章であれば、どんなに些細なことであっても、いくらでも盛り上げようがあるが、映像となると実際に画が説得力を持っていないといけないので、自ずと大袈裟になる。火矢が研究拠点に放たれるのとかその最たる例。あと、原作には登場しないなんかデカい奴(寺の前に捨てられてた人だっけ?)。原作では大和暦が採用される場面がクライマックスだが、公家を明確に悪役に据えて、金環日蝕のシーンをクライマックスに持ってきたのも映画ならでは。また、原作で見るよりえんがおしとやかな感じで、これはやっぱり「宮崎あおいの可愛さ」という軸が映画にはあるんだなと思った。
関孝和を演じた市川猿之助、すごかった。怪演。うわ、こうなるのかと新鮮に驚いた。算哲を叱責するシーンの迫力良かったですね。建部と伊藤もはまり役だった。キャストがしっかりしている。
プロット整理
時間 | できごと | メモ |
---|---|---|
0〜10 | 神社の絵馬が映る。 登城、勝負碁を冒頭から打っている 初手天元をいきなりやる。 | ・原作では二刀だったところが棋譜の忘れ物になっている ・えんの男勝りな感じが少しなくなっている ・関が解答に留まらず問題を出している |
11〜20 | ・日蝕が起こる →不吉なので上覧碁が取りやめになる →勝手に勝負碁をするなと怒られる ・会津に呼ばれる →保科に北極出地をもちかけられる (作中にない、北極出地の説明) ・ここで二刀が出てくる ・村瀬の塾(礒村塾)に行く →村瀬とえんと算哲で食事 ・関の稿本を読む (何度か転換が入る) | ・北極出地について、わりと万人が 理解できそうな親切な解説があった |
21〜30 | ・刀を礒村塾に忘れかける、 帯刀の仕方がわからない ・関の出問を解いた、問題を出す →えんが、塾に貼り出すことを提案 ・北斗七星の話(映画オリジナル) ・関が設問に回答したら 答えを預かってくれとえんに頼む(一年後) ・道策、碁を禁じられる(映画オリジナル) →初手天元を封じる ・伊藤と建部登場、神社で成功を祈願 小田原着 ・建部と伊藤だけ行軍の歩き方 ・陣が張られている ・天測の計算勝負(最初は算哲参加せず) | ・原作では、刀を忘れるのは第一章の神社の場面。 ・帯刀の仕方を教えるのが安藤ではなく、えんになっている ・関も星が好きなんじゃないかと算哲が言うセリフがある ・昔の歩数計の形が面白い |
31〜40 | 星の解説が入る 熱田 ・算哲が明察をする ・関の話を二人にする 場面転換 ・算哲、関の問題に明察 ・関、算哲の問題に「無術」と書きかけやめる 場面転換 ・建部と伊藤から、誤問だと指摘される ・また刀を茶屋に忘れかける ・建部と伊藤に碁を教える ・予報にない月蝕が起こる、 蝕を予測した暦はない | ・闇斎が回想で出てくる ・魚がわからんネタ複数出てくる (原作では、礒村塾に土産として持ってくる魚が 毎回謎という天丼ネタだが、 映画では他の食事シーンでも頻繁に用いられる) ・原作では、安藤が病問を指摘するが、 建部と伊藤から指摘されるよう改変されている |
41〜50 | ・宣明暦が誤っているという話 ・薩摩まで、建部の病状が悪くなる 銚子で再び落ち合う約束 ・大願の話、渾天儀 ・「精進せよ 精進せよ」 中山道 銚子に着く ・建部の死を知る 伊藤「頼みましたよ」 算哲「頼まれました」 ・北斗七星が一周する(一年が経つ) 雪の大間 ・ようやく算哲帰宅 | |
51〜60 | ・関さん名指し問題を礒村塾へ 貼り出すよう頼みに行く ・えんがいない、嫁いだ ・水戸黄門登場 「戦う意欲、新しい息吹を奪うこと、 この大和は滅んでしまうの」 ・保科からの呼び出し、正しい暦を武家から ・闇斎登場 ・からんころんの音→神社のカット 会津に本拠地 ・宣明暦、大統暦、授時暦の検討をする | ・暦の利益について水戸黄門から言及する、 原作では地の文 ・原作では当初、宣明暦と授時暦の比較検討として描かれる。 のちの三暦勝負(原作では三暦合戦)では大統暦も登場 |
61〜70 | ・天測の説明ダイジェスト ・闇斎との印象的な会話 ・新しい星に御息所と名付ける (これ原作になかった気がする) ・関の稿本が出る この稿本の数理をいただきましょう ・授時暦と結論つける→帝に上奏 ・泰福もう出てくる、 「以て嗤うべし」の流用 ・元国の暦は不吉だという理由で 上奏が却下される ・安井と本因坊が真剣勝負を始める ・三暦勝負の開始 | ・「以て嗤うべし」は、原作では山鹿の言だが 映画では公家の台詞として登場 |
71〜80 | ・礒村塾に三暦勝負貼ってもらう ・えん、戻ってくる(離縁されたと言及あり) ・蝕勝負のダイジェスト(一〜五) ・関さん、三暦勝負の張り紙に 大きくバツをつける ・研究拠点に何者かから火矢が放たれる ・殺されかける、闇斎先生が庇って死ぬ ・からんころんの音 | ・えん、原作では夫に先立たれている ・算哲の妻・ことの存在は映画では抹消されている ・関のシーンは当然映画オリジナル ・火矢も当然映画オリジナル ・闇斎が庇って死ぬのも当然映画オリジナル |
81〜90 | ・最後の勝負の日 カラスが大量に飛び立つ 蝕が起こる、勝負を外す ・保科に刀を返納 保科逝去 ・燃えた本拠地で一人慟哭していると、 えんが訪ねてくる ・関がきて、設問を残していったと告げられる ・関と対面して叱責される ・関から研究成果を託される | |
91〜100 | ・神社参拝 ・えんに嫁に来て欲しいと伝える ・帯を解いていただけますか ・えんと算哲が夫婦になり、 観測を幕府の後ろ盾なく再開 ・算哲荒れる ・道悦、道策師弟対決が行われ道策の勝利 道策から算哲無視される → のちに道策家を訪ねてくる 「生気のかけらもない」とはっぱをかける ・えん「観測の時間ですよ」 | ・原作では算哲は荒れない ・あと今さらだが、原作では、のちに改名した 「渋川春海」から、一人称は「春海」で一貫されているが、 映画では混乱を避けるため 一貫して「安井算哲」が使われている |
101〜110 | ・水戸黄門に目通る 諸外国の資料をもらい、地球儀をつくる ・時差を発見 関に解説 ・水戸黄門に暦を献上 ・大和暦はどうだ?と水戸黄門が提案 ・土御門泰福と面識があった (幼い頃机を並べて教えを請うた) ように改変されている ・大統暦を公家が誓願 公家に碁を教える(公家しぐさ) 観象授時、天に触れるなと脅される | ・時差を発見するシーンは映画オリジナルだが 非常によかった。 地球儀をつくり、えんがそこにろうそくを当てる。 日本が午の刻のとき、反対側はどうなのでしょう、 みたいなことを言い、そこで算哲が「あっ……」と気づく これは観客にも視覚的にわかりやすい説明の仕方でよかった ・大和暦という名前を提案するのは原作では関 ・実際には土御門泰福とは面識がない |
111〜120 | ・大和暦への改暦上奏を却下、大統暦を採用 ・水戸黄門に怒る 作中オリジナル、水戸黄門から 刀を首に向けられる ・ここで刀を再度手渡される ・えん「私より先に死なないでください」 ・梅小路の面前勝負 ・梅小路で演説 公家がわざわざ文句言いにくる | ・水戸黄門に八つ当たりするなよ……(当然映画オリジナル) ・刀が手元に戻ってくる手順が異なる。 原作では酒井から受け取っているが、 画面映えするからか、 光国から託されるように改変されている。 その他にも、光国がやたら目立っている |
121〜130 | ・蝕が起こると大和暦が予報していた日、 雨が降っていたが上がる 観測の準備する ・これまでのダイジェスト、建部、伊藤、 闇斎、関、保科 ・なかなか欠けない 腹切れコールが起こる (ひでぇや……) ・鳥が大量に飛ぶ ・蝕が起こる、えんが駆け寄ってくる ・えん「天地明察でございます」 ・金環日食で星が見える | ・過剰なドラマチックさが付加されている ・「長生きすれば昼に光る星が見えるさ」的な 台詞は映画オリジナルだったと思う、 エンディングで伏線を回収してきた ・溜めすぎやろってくらい日蝕が起こらない ・おやくそくをきちんと守るクライマックス ・この辺はもう完全に映画オリジナル |
131〜141 | ・初手天元に打つ (算哲と道策が勝負している) 黒石を算哲が使っている ・渾天儀をつくった ・算哲とえんは同じ日に亡くなった、 のナレーションでしめる ・からんころんの音 スタッフロール | ・ナレーションやテロップは全編を通じてうるさすぎずよかった ・渾天儀の大願についてちゃんと回収されるんやろうかと 内心はらはらしていたのでラストで出てきてよかった |
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