【鳥の閑話】2025/04/30〜05/08

Diary日記,鳥の閑話

※この記事は有料サブスクリプション「鳥の閑話」の記事になります。「鳥の閑話」についてはこの記事に詳しいです。月額300円(30日間無料)で閲覧いただけます。単体購入も可能です(記事ごとに100〜200円で設定しています)。

あったことや考えたことのまとめです。章立てはこちら。

・文学フリマ情報
・『終わりの鳥』観賞
・最近読んでいる本
・近況

文学フリマ情報

5月2日、本が届きました。

めっちゃ良い感じ!

『新層 まったく新しい勉強会成果論文集』については上記の記事をご確認ください。

文化系トークラジオ Lifeさまにて、文学フリマ東京40の注目本として『新層』を柿内正午さんにご紹介いただきました。ありがとうございます!

また、『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』著者の阿部幸大先生にも引用RTをいただきました。

これらの反響を予想しておらず、もっと刷っておくんだった〜! と思っています。売り切れてしまったらすみません。てか、多分売り切れます。今のところ、BOOTHにてPDF版の販売も検討しているのですが、予想外の売れ行きであれば第2刷も検討の余地も残しておこうと思います。

藤井はほかに、反-重力連盟の新刊にも参加しています。

藤井は『鳩造りの工程』という1万字程度の短編小説を寄せています。こちらも良ければぜひ! 
「鳩が造れることを発見したわ」 ——造鳩、決闘、銀河創造、二人の放課後クラブ活動。
反-重力連盟は「いつか重力によって奪われたものを取り戻す、そのための暗躍。」を標榜する団体ですが、SF小説の機関誌『圏外通信』はSF的想像力に忠実な作品と、奇想にあふれた作品との両方を楽しめる魅力ある本です。ブースは南1-2ホールの【A21〜22】です。後日通販もあると思いますので、ぜひチェックしてください。

『鳩造りの工程』は、友人から「代表作では」とも評していただき、自身でも気に入っている作品です。鳥の神話を真っ直ぐやっている作品ですので、ぜひ紙でお求めください。

また、次回の文学フリマ東京41(11月23日)にも申し込んでみました。こちらは、完全に個人のサークルでの出店になります。実は個人サークルでの出店は初めてです。これまでは、鳩アンソロジー、故郷喪失アンソロジー、論文集、文芸誌『異界觀相』など複数人の作品をまとめた本でしか出店してきませんでした。個人サークルでの参加をしなかったことについては特段理由があるというわけではないのですが、そういえば【鳥の神話】として、そろそろ自分の名刺代わりとなる作品集を発行しても良いのではないかと思うに至りました。

現状作品集に含めてもいいかなという作品を集めて組版してみたところ、165ページになりました。ここ2年くらいで書いた作品が中心です。これは多いのか少ないのか……できれば200ページは超えたい。新作の書き下ろしを数本行おうと思います。頑張るぞ。

『終わりの鳥』観賞

https://happinet-phantom.com/tuesday

映画『終わりの鳥』を滑り込みで見てきました。いやあ、非常に良い映画でした。

「ある日、余命わずかな少女〈チューズデー〉のもとに、死をかたどった鳥〈デス〉が舞い降りる——」というあらすじですが、あらすじから想像される物語を上回る良さがありました。

良かったのでパンフも買った。残念ながら、関東ではもう終演なのですが、機会があったらぜひご覧いただきたいです。

以下ネタバレ感想

まず、鳥が出てくるので私の判定が甘くなっていますが、鳥が出ればいいってもんじゃないんですよね。『終わりの鳥』の〈デス〉は終始不気味で、そして鳥らしい動きをしており、ユーモアのセンスもあります。超常的な存在を、カラフルなオウムとして描いたのがまず本作の大きな達成ですし、それが非常に本編と噛みあっていて良かった。チューズデーの母親ゾラは、娘の死を受け入れることができません。そこで取った手段が、〈デス〉を殺そうとする——分厚い本で叩きまくり酒浸しにして火をつける、なのがまず面白いです。しかし、そんなことで〈デス〉が死ぬはずもありません。焦ったゾラは、なんと黒焦げになってなお生きているデスを頭から食べてしまう。この、食べてしまうというのがすごい。なさそうでありえるぎりぎりのライン。そうだよな、母親だもんな、娘が死の危険に瀕したらそれくらいはするよな、という納得感もありつつ、食うのかよ、というのが面白い。それから、世界は死をもたらす存在が不在となってしまい、「明らかに死期が来ているのに死ねなくて苦しむ存在たち」が大勢発生してしまうことになります。もう外の世界はパニック映画なのですが、チューズデーたちの家は外界から隔絶されたように静か。その塩梅もよかったです。看護師8(おそらくこれまでに何人もの看護師がやめさせられている)から外の様子を聞いたチューズデーは「ママがやらかしたみたい」と言って、かれらを救う(死をもたらす)ための旅にゾラを連れ出します。ゾラは〈デス〉の能力を受け継いで、身体が伸び縮みしたり、手をかざすことで存在に死をもたらすことができるようになっているのでした。チューズデーを背負ってゾラは存在たちに死を与えて回ります。この、物語的に考えたらまあそうなるよねというリアリティラインが終始妥当なのに絵面がシュールすぎておもろい、みたいな瞬間がこの映画にはたくさんあって、それが私の琴線にびびびっと触れたわけですね。終盤、案の定チューズデーは亡くなるのですが、その看取りのシーンはこれ以上ないというほどに見事。あと、ゾラがダメ馬鹿女なのですが、その馬鹿さ加減がすごく上品で良い。憎めない馬鹿女なんですよね。一方のチューズデーはとても聡明です。そして互いが互いを必要としあっている。ゾラはしばらく死の巡礼を続けたあとに「私この仕事向いてるかも、フルタイムでもいい」みたいなこと言い出して、それが馬鹿女すぎてかなり好感度高いです。しかし、〈デス〉の能力を受け継いだことで死期の近い娘の苦しむ声が雪崩れ込んできて、そこで娘の苦しみをようやく理解する。それから吐き戻されたデスと交渉をし、自宅でしっかりとチューズデーを看取ります。デスも良いキャラクター造形をしていて、チューズデーを看取ってしばらく経ったのちに、ゾラの様子を見に来るんですよね。そのシーンが、とても良い。うん、しみじみ良い映画だなと思います。DVD出たら手元に置きたいです。嫌味なキャラクターが出てこないし、ストレスがありませんでした。映像も綺麗だし、シュールな映像とのバランスもよかった。馬鹿すぎる安っぽすぎる感じにならずに、ちょうどよくまとまっている。作中で引用されるのがIce Cube「It Was A Good Day」なのも最高。私も死ぬときは鳥から死を与えられたい。〈デス〉とチューズデーが抱擁するシーンが一番好きでした。

いやあ、良い映画だった……(しみじみ)。場所によってはまだ観れる(地方によってはこれから上映が開始される場所もある)ので、ぜひチェックしてみてください。